AIさんはちょっとした調べものにちょー便利

 たとえばこんな小説を書き始めたとします。舞台は中世ヨーロッパ風のファンタジー世界です。


『エリザベスはトイレの扉をあけた姿勢で固まった。床に男がうつ伏せで倒れている。頭部からの出血は赤黒い血溜まりになり、血しぶきが白い便器の湾曲した表面に飛び散っていた。顔は下向きになっているので誰なのか、どんな表情をしているのか、わからない。割れた便座の破片が便器の内側に落ちているものの、底にたまった水は血に濁っておらず、タンクの分厚くて頑丈なフタの角が砕けて赤く染まっていることから、男はそこに頭を打ちつけ――あるいは打ちつけられ――て、倒れる勢いで便座を割り、この状態になったのだろう……』


 ここでふと疑問が湧きます。

 中世ヨーロッパのトイレってこれでいいのか?

 白い陶器製で、円形をしていて、U字形の便座が付いてるやつで?

 水洗タンクなんてあったのか?


 こういう時、とりあえずgoogle検索で「中世ヨーロッパ トイレ」を調べて、適当に良さそうなサイトを選んで読みますよね。トイレが重要なお話なら図書館で調べるかもしれませんが、このお話ではそれほど重要ではないので、それっぽく描写できれば問題ありません。


 では、自分で調べる代わりにAIさんに聞いてみましょうか。


私:中世ヨーロッパのトイレはどんな形をしていましたか。室内の様子は?


BingAIさん(厳密):

 中世ヨーロッパのトイレは、現代のものとは大きく異なります。城壁を突き出した部分に設けられた「ガルドローブ」と呼ばれるトイレがありました。これは、城壁に突き出した部分に丸い穴の空いた石の座面を設け、その下には肥溜めがありました。汚物は地下約12メートルの肥溜めに落ち、自然に分解されるのを待つ仕組みでした。


 室内の様子については、寒さ対策に暖炉を置いていたり、悪臭対策として使わないときは座席の上に緑のシートをかぶせ、穴の上にクッションを置いていたとの記録があります。これらの情報から、中世ヨーロッパのトイレは、現代のものとは異なる形状と機能を持っていたことがわかります。また、衛生状態の管理にも工夫がされていたことが伺えます。【回答ここまで】


 ふむ、城壁の内部にあって便座は円形。情報ソースとして示してもらったサイトを見ると木製みたいだけど、床や壁と一体になっている便器部分は石製でも違和感なさそう。臭い防止のフタはあっても、水洗タンクはないようです。これで先ほどの書き出し部分もそれっぽく修正できそうですね。


『エリザベスはトイレの扉をあけた姿勢で固まった。床に男がうつ伏せで倒れている。頭部からの出血は赤黒い血溜まりになり、血しぶきがずれた便座のフタに飛び散っていた。そこから漏れる悪臭が室内に充満していることから、長い間この状態だったことが伺える。顔は下向きになっているので誰なのか、どんな表情をしているのか、わからない。木製の便座がはめ込まれた石材の角が赤く染まっていることから、男はそこに頭を打ちつけ――あるいは打ちつけられ――て、床に倒れたのだろう……』


 こういう調べものなら、AI使用の有無に関するポリシーにも影響はなさそうです。というか、おそらくは数年以内にこういう検索方法が普通になっていって、意識されなくなると思います。

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