第8話

「あの時もこんな夜だった...」

部屋の窓から満月を見上げ呟く。

「シャル、大丈夫?」

シャーロットに協力している妖精が問い掛ける。

「大丈夫よ。心配しないで」

「あの魔法少女達は私達を助けてくれるかな?」

「私は誰かと馴れ合うために日本に来たわけじゃないの。」

「でも、協力しないとジャックや他の幹部達を倒せないよ。」

「協力なんていらない。ジャックは私が殺す。」

「シャル、憎しみに心を囚われないで、光が弱まってしまう。」

「光なんて、私には関係ないわ。」

「シャル!」



「♪〜」

鼻歌を歌いながら新たなターゲットをイーヴィルに変貌させる。

「暴れろ。恐怖や憎しみは最も大きな心の闇だからな。」


「この国には害虫がたくさんいるのね。」

「お前は、あの紫の…そうだシネラだったか。酷い言いようだな。本当に正義の魔法少女なのか疑っちまうぜ。」

Shut up黙れ!」

シネラはイーヴィルを無視してアフリに襲いかかる。

「そう来るか。いいぜ、相手してやる。」


シネラはかなり戦い慣れており、力押し以外の方法を知らないアフリにとっては戦いにくかった。

「チッ、面倒な。」

「死ね」

「おっと」

「ハア!」

「何度も同じ攻撃を喰らうかよ!」

「足下がお留守よ!」

「うお!」

足払いを受け、倒れ込んだアフリにトドメの一撃を放とうとするシネラの目の前に爆弾を出現させ、爆発させる。

自爆ではあるが、爆発に耐性があるため、ダメージ的にはシネラの方が大きいだろうという判断だった。

「ふぅ、危ねぇ。ん?」

アフリはシネラがいつ攻撃してきても良いように周りを見渡すと、シネラは地面に倒れていた。

「そんなに強力な爆発じゃなかったんだがなぁ」

「…なんで、動かないの…前はあれくらいの攻撃…」

「お前、弱いな。」

「私が弱いですって…!」

「戦闘技術は一流だ。だが、魔法少女としての力は最低クラスだ。」

「そんなはずは…」

「魔法少女向いてないぜ。俺は優しいんだ。ここで魔法少女なんて辞めるって言うなら、命までは取らないでいてやる。どうだ?」

「負けを認めるくらいなら死んでやるわ。」

「そうか。」

アフリはシネラを力強く踏みつける。

「アグ!」

「はあ、お前が賢ければこんな痛みを味わう事も無かったのにな。」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

ミシミシと骨が軋み、筋繊維が千切れていく。

「いいか、世の中ってのはそう都合良くはいかない。お前がどれ程の不幸を味わったのかは知らないが、不幸な人間なんて五万といる。お前は所詮、自分に起こった不幸を受け入れなれなかった哀れなガキに過ぎないんだよ。」

「黙れ!黙れ!黙れぇ!」

「そうやって耳を塞いでいろ。お前は永遠に負け犬だ。クク」

その時、イーヴィルが倒された事を感知する。

「倒されたか。まあ、十分な量のダークエナジーを回収できたし、今日は引き上げるとするか。」

グッタリとしたシネラを気にする様子も無く、アフリは去って行った。




「あれ?あそこに倒れているのってシャーロットちゃんだよね?」

「本当だわ!こんな時は救急車かしら!?それとも警察!?」

「2人とも落ち着いてください。とりあえず、119番に連絡して、私達は彼女の様態を確認しましょう。」

「そ、そうだね。大丈夫?声は聞こえる?」

希はシャーロットに走り寄って声をかける。

「…」

「意識は無いみたいだよ。」

「呼吸、脈拍共に安定しています。救命講習の出番かと思ったのですが、いらないみたいですね。」

「いやー、麻美ちゃんがいてくれて助かったよ。って、あ、倒しちゃった。」

カバンに足が当たり、倒れて中身が飛び出してしまったので、片付けようとすると、見覚えのあるアイテムを見つけた。

「これって、魔法少女の変身アイテム?」

「彼女、魔法少女なの!?」

「しー!静かに!」

「あの紫の娘かな?」

「魔法少女はもう1人いるとは聞いていたけど、シャーロットさんだったのね。」

意識は無いが、呼吸も脈拍も安定していたため、救急車が来るまでその場で待機していた3人の話題が、マジカル・シネラの正体がシャーロットだったという事になるのは必然だった。

「外国の敵について聞きたいわね。」

「どんな能力があるのか気になるな。」

「何か事情がありそうですから、相手の様子を見て尋ねるんですよ?」

「大丈夫、大丈夫!」

「すごく不安です。」



「彼女をかなり痛めつけたようですね。」

「なんだ、文句でも言いに来たか?」

「いえいえ、感想を聞きに来たのですよ。彼女はどうでしたか?」

「弱いな。テクニックじゃあどうしようもないレベルだ。」

「そうでしょうね。イギリスにいた時はもう少し強かったのですが、少し見ない間に弱くなってしまいましたね。」

「そうか。俺は弱いままの方が対処が楽で良いんだがな。」

「私は最高の戦士になった彼女をCollectionコレクションに加えたいのです。しかし、彼女の精神は復讐に囚われているため魔法少女の力はほとんど無い。最低限の強化があるだけで、まったく魔法少女の力を解放出来ていないのです。幸いこの国には他の魔法少女もいますから、彼女には絆という物を紡いで欲しいものです。それを壊すのも一興ですからね。」

「勝手に言ってろ。」

ニヤリと笑うジャックを適当にあしらうアフリだった。

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