第5話
「さて、誰にしようかなと」
ダークエナジーを回収するためにターゲットを探しつつブラブラと歩いていると、建物全体が悪意に満ちているビルを見つけた。
「何があったらこんな事になるんだ?」
スマホでビルの名前を検索してみると、いくつかの口コミがヒットした。
「このビルはブラック企業なのか。ずっと働かせるなんて能率が落ちるだけだと思うが、好都合だ。出て来いイーヴィル、お前をそこまで追い詰めた社会に復讐してやれ。」
「GUGYAAA!!」
「でか...」
ビル全体がイーヴィル化したためその全長は50m以上で魔法少女ではなく、ウル〇ラマンに出てくる怪獣という方がしっくりくるほどのサイズだ。
「質はともかく量は集められそうだ。」
ドカーン、ドカーンと歩くだけでビルをなぎ倒し、道路を陥没させる巨大イーヴィル。
動きは遅いが、その破壊力は目を見張る物がある。
「魔法少女共には勝てないだろうな。だが、歩かせているだけでコイツは脅威だから良いか。」
その頃、周辺の区では避難命令が発令される事態になっており、住民達はパニックになっていた。
「さっきSNSで拡散されていたけど、あれってイーヴィルだよね?」
「多分、そうだと思うけど」
「どうやったらあんなに大きくなるのでしょう?」
「あれがイーヴィルなら、大きさなんて関係ないよ。イーヴィルにされた人を助けてあげないと!」
「そうね。これ以上街を壊されるワケにはいかないわ。」
「怖気付いている場合ではありませんね。」
「またあなたね!アフロ!」
「どう見ても違うだろ。バカが」
「アフロ...ププ」
「2人とも笑っている場合じゃないわよ。」
「そうだった!みんな、行くよ!」
「「「変身!」」」
前口上を言いながら変身しているが、まったく興味が無い俺はさらに暴れるようにイーヴィルに指示を出す。
「これ以上、街を壊させたりしないんだから!」
「お、やっと終わったか。毎度ご苦労なこった。」
「うるさいなあ!とりあえず、あのイーヴィルを倒すよ!」
「させると思うのか?」
「あの人の相手は私がする。2人はイーヴィルを」
「リリス、大丈夫なの?」
「私だって強くなったんだから、足止めくらい余裕だよ!」
「結構な自信だな。」
「1発ぶん殴ってやるんだから!覚悟してよね!」
「は!やれる物ならやってみろ。」
リリスがアフリと言い合っている間にアズレとマリーはイーヴィルと戦っていた。
「動きが遅いから攻撃は当たらないけど、ダメージが通っている気がしないわ!」
「弱点があるはずです!」
「そうね!弱点と言えば、ここよ!」
アズレはイーヴィルの膝の裏に渾身の一撃を叩き込む。
「GUGYAAA!」
ビリビリと肌が粟立つような咆哮を上げ、バランスを崩すイーヴィル。
「関節に装甲があったら動けないものね!まずは動きを止めるわよ!」
「分かりました!マジカル・サンダーボルト!」
マリーの必殺技がイーヴィルの膝に当たるが、当然その巨体を一撃で浄化する事は叶わない。
しかし、膝は焼け焦げ、立ち上がる事が出来なくなった。
「GYAOOO!」
「もう片方も氷漬けにしてあげるわ!マジカル・アイスバーン!」
凍り付いた膝を動かす事が出来ず、倒れ込むイーヴィル。
腕を振り回して抵抗するが、それだけでは2人を止める事は出来なかった。
「「マジカル・チャージショット!」」
「GUGYAAA!」
アズレとマリーの必殺技を浴びたイーヴィルは少しの間耐えたが、結局出力をさらに上げられた事で消滅した。
「はあ、はあ、身体が大きいと浄化するのも一苦労ね。」
「そうですね。早く、リリスを助けに行かないと」
マリーとアズレがイーヴィルと戦っている頃、リリスは前回と同じヒット&アウェイで戦っていた。
「バカの1つ覚えだな。」
「足止め出来れば良いんだからあなたとまともに戦う必要は無いんだよ。」
あっかんべーをして挑発する。
「安い挑発だな。」
アフリは一気に距離を詰め攻撃する。
リリスはその攻撃を屈んで回避し、下から拳を突き上げる。
「やあ!」
アフリはその拳を掴み取る。
「これで逃げれないな。」
アフリの拳が当たる度に小さな爆発が起き、リリスを痛めつけていく。
「ウグッ、この!」
「見え見えだぞ。」
苦し紛れに放たれた拳を受け止め、リリスの顔面に頭突きをお見舞いしてやる。
「キャアア!」
リリスの手を放し、爆発に吹き飛ばされ倒れるリリスを踏み付ける。
「おいおい、1発殴るんじゃなかったのか?」
その瞬間、イーヴィルの断末魔が響き渡った。
「へへっ、イーヴィルを倒したみたいだね。私の勝ちだよ。」
「お前は俺を苛立たさせる天才らしい。」
リリスの腹を爆発が起きるのも無視して何度も踏み付ける。
「ガハッ!」
ぐったりとしたリリスを蹴り上げ、壁に叩きつけた。
「今日の所はこのくらいにしといてやる。」
そのままワープしてアジトにアフリが帰還した後、アズレとマリーが駆け付けた。
「「リリス!」」
「酷い...」
「...どう?私、頑張ったでしょ?」
「ええ、そうね。」
「アフリは撤退しました。安心して休んでください。」
「うん、ちょっと疲れちゃった...」
そのままリリスは気を失い、変身が解除されたのだった。
「私達はこの子に助けられてばかりね。」
「こんなになるまで戦って、強くならなければ…」
「希、私達はあなたを救いたくて魔法少女になったの。それなのに、助けられてばかりで...」
気を失った希を連れてその場を離れたのだった。
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