第4話
俺がアジトへと帰って来るとアポフィスが狼男と待っていた。
「上手くやったようね。」
「コイツが新人か。俺の名はマルシス。俺の脚を引っ張るなよ。」
「お前が3人の幹部のうちの1人か。あの程度の相手にやられているようじゃ先が思いやられると思わないか?」
「なんだと?もう1回言ってみろ!」
「やめなさい。ただの顔合わせでどうしてケンカをしようとするのよ。そんなにケンカをしたいなら余所でやって。」
「チッ、俺はもう行く。やる事があるんでな。」
マルシスと名乗った狼男はノシノシと去って行った。
「それで、もう1人はいないのか?」
「ああ、ジャックの事?彼は海外にいてね。近々こっちに来る予定だけど、気まぐれだから分からないわね。」
「そうか。」
「それにしても、初戦とは思えない結果ね。ダークエナジーもたくさん集められて、魔法少女にも痛い目を見せられて。」
「お前らは出来なかったのか?」
「私はイーヴィルに任せてしまうもの。その分たくさんダークエナジーが集められるんだけど、負けて帰って来る事になるのよ。」
「目的が違う訳か。」
「そうよ。イーヴィルを作るのにも、アーク様を復活させるのにもダークエナジーは使うもの。アーク様が復活なされば魔法少女なんて相手にならないわ。」
「アークとはなんだ?」
「そう言えば話していなかったかしら?アーク様はアスターの首領で、根源の闇を司っておられる方よ。今は力を使い果たして眠りについているけど、もう一度目覚めるにはたくさんのエナジーが必要なの。」
「なるほど、だからエナジーを最優先にしていると…」
「まあ、私は今まで通りエナジーの収集を最優先にするけど、あなたは別にやり方を変える必要は無いわ。」
「分かった。」
「私はあなたに期待しているんだから。ガッカリさせないでね。」
「知るか。お前の期待を俺に押し付けるな。」
俺は休息を取るためにその場を去った。
先程の戦いの後、魔法少女達は詳しい話を聞こうと佐藤と名乗った年配の刑事を連れてファミレスへと来ていた。
「私は天野 希、一応、マジカル・リリスをやっているよ。」
「私は水見 百合、マジカル・アズレよ。」
「私は桐谷 麻美、マジカル・マリーをしています。」
「助けてもらったのは2度目だな。俺は佐藤 繁、職業は警察官だ。」
「前回はもう1人いましたよね?」
「アイツは足を骨折してな。入院中だ。堂々とサボれるってほざいていたよ。良い性格してるよアイツは」
「アハハ…」
「それで、魔法少女は知っていますか?」
「噂は聞いている。信じちゃいなかったが、この目で見たんだ。信じるしかない。それで、月無の野郎はバケモノになったのか?」
「月無と言うのは…」
「君達と戦っていた男の事だ。月無には爆弾テロの容疑がかけられている。」
「爆弾テロ!?」
「希!しー!」
「あ、ごめん。」
「彼は自身の事をアフリと名乗っていました。恐らくは…」
「そうだったか。君達の役に立つかは分からないが、ヤツにかかっている容疑について話してやる。東京近郊で数年前から度々爆弾による被害があった。予告なんてものが無いから爆発するまでどこに仕掛けられているのか分からず、死者だけで数十人もいる。そんな被害が出ているにも関わらず、警察は容疑者を絞る事が出来なかった。」
「それの犯人が彼だと思ったのはなぜですか?」
「ヤツと会った時、揺さぶりをかけたんだ。それで動きが無ければそれでよし。動きがあれば、ヤツは容疑者にリーチをかける。」
「それで、動きがあったと。」
「そう言う事だ。ヤツの持っていたリュックは押収出来たが、本人には逃げられてしまった。これが俺の知っているすべてだ。あまり、役には立たんだろう。」
「いえ、彼を改心させるには彼の過去を知らなければいけませんから。」
「よし、俺が調べてやる。有用そうな情報があれば君達にも教えてやる。」
「それって犯罪なんじゃ?」
「いいか、大人ってのは汚いんだ。覚えておけ。」
「すっごい開き直ってる…」
「それじゃあ連絡先を教えてくれ。」
「え、まさか私達の連絡先を聞くために!?」
「バカ野郎!俺はな、結婚してんだ。俺の娘よりも若い子どもに興味なんかねぇよ。」
「まあ、それならいいけど。」
佐藤は全員分の連絡先はいらないと言うので、代表して希が連絡先を交換した。
あくる日、またイーヴィルが現れた。
そこはデートスポットであり、たくさんのカップルで賑わっていた。
「イーヴィル、あの幸せそうなカップルを絶望させてしまえ!」
「待ちなさーい!」
「あ、今回はワンちゃんだ。」
「俺は犬じゃねえ!狼だ!何度言えば分かる!このアホリリスが!」
「誰がアホよ!」
今回はマルシスが出て来ていたが、2人でおバカな口論が繰り広げられていた。
「イーヴィル!やってしまえ!」
「行くよみんな!」
マルシスは腕組みをして戦いを眺めていた。
それから少ししてイーヴィルが倒された。
より強くなるために特訓している魔法少女達にとってイーヴィルなど敵では無いのだ。
「やるじゃねえか。今度は俺が相手だ。」
マルシスはイーヴィルが倒されると次の相手は自分だと3人に飛びかかっていく。
狼の身体能力と炎で魔法少女を攻撃するが、アズレの水を操る能力により相殺され、善戦されているようだ。
そうこうしているとアズレ単独の必殺技が放たれた。
「マジカル・スプラッシュニードル!」
無数の水飛沫が針のように尖り、マルシスを攻撃するが小さな針はマルシスの毛皮によって弾かれてしまう。
最後には人の背丈ほどの水の針を作り放つが、それはマルシスに迎撃される。
「今よ!」
今度はマリーの必殺技が炸裂する。
「マジカル・プラズマボルト!」
「何!?ぎゃあああ!」
水で濡れている所に雷を流され、感電するマルシス。
「クソ!覚えていろ!」
大ダメージを受けたマルシスはシッポを巻いて逃げたのだった。
逃げ帰って来たマルシスは悔しげな表情を隠そうともせず、腹立たしげに椅子に座り込んだ。
「お前の無能さを物にぶつけるなよ。」
「なんだと?この苛立ちを貴様で発散してやってもいいんだぞ!」
「やめておけ、お前では俺に勝てない。試してみるか?」
「ここまでバカにされたのは初めてだ。」
「あなた達何をしているの。一刻も早くダークエナジーを集めなければいけないのに、無駄な事に力を使わないでちょうだい。」
「チッ、命拾いしたな。」
「魔法少女共に殺られないように精々頑張る事だな。」
「どうしてもっと普通に出来ないのよ」
アポフィスはハァーと頭に手を当てながら大きなため息を吐いたのだった。
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