第3話
「俺を楽しませてくれ!」
俺は足の裏を爆発させて一気に推進力を得る。
某アニメのキャラの様に空を飛ぶなんて芸当は出来ないが、俺の身体能力があれば直線を目にも止まらない速さで駆け抜ける事が出来る。
「どこを見ている?」
少し離れた位置にいたアズレの横に回り込み一気に拳を振り抜く。
なんとか俺の動きに反応し、腕で防ごうとするが、拳が当たった場所が突然爆発した。
「な!」
「呆けている場合か?」
爆発により腕を弾かれガラ空きになった腹を殴り付ける。
「きゃああああ!」
勢い良く吹き飛びビルの壁にヒビを入れてその場で倒れる。
俺が追撃しようと手を翳かざすと、マリーが追撃させまいと声を上げて攻撃してくる。
「はああああ!」
「不意打ちする時は声を上げない方がいいぞ。」
アズレに向けていた手をマリーに向け、解き放つ。
ドゴオォンという爆発がマリーに炸裂し、吹き飛ばす。
かなり大きな爆発だったが、擦り傷と煤汚れ程度済んでいるのはさすがというほか無いだろう。
「こんなものか?お前達の力を見せてみろ!」
マジカル・リリスは焦っていた。
相手の幹部がアズレとマリーを連れてどこかに行ってしまい、早く助けに行きたいのに目の前のイーヴィルを中々倒す事が出来ない。
「早く、早く倒さないと…!」
焦りで周りが見えなくなっているリリスはいつもの調子を出せていなかった。
2人がいる方向から爆発音が聞こえてくる度に気が散ってしまう。
「GYOOO!」
「しまっ…!」
少し余所見をした隙を突かれ攻撃を食らってしまう。
「きゃあ!」
空中で体勢を立て直すが、いつもなら1人が攻撃された隙に攻撃してくれていたのにと頭をよぎる。
「あんなのに突っ込むなんて…」
1人で出来る必殺技もあるが、避けられてしまえば今以上のピンチに陥る。
徒手空拳で相手の動きを弱める必要があるが、魔法少女になって頑丈になり、身体能力は上がったが、中身はただの女子学生、怪物を前に平静を保てるはずがないのだ。
しかし、彼女は普通の女の子ではない。
光の妖精が見出した愛の魔法少女なのだ。
「やるしかない!」
リリスは突撃をする。
最初は迎撃され弾き飛ばされるが、徐々にその動きについて行き、「はあ!」
渾身の一撃を叩き込む事に成功した。
その一撃はイーヴィルの急所であるコアを捉えていた。
その攻撃で動きを鈍らせたイーヴィルにリリスは必殺の一撃を撃ち込む。
「マジカル・ハピネスアロー!」
光の矢はまっすぐにコアを貫き、イーヴィルは消滅したのだった。
「はぁ〜、怖かったぁ。ってこんな事してる場合じゃない!2人を助けに行かないと!」
「はぁ、ガッカリだ。」
アズレとマリーはガレキの上に倒れ、立ち上がる事すら出来なくなっていた。
「お前ら、あからさまに技を撃とうとしているのが丸わかりだ。もっと工夫しろ。全然面白くない。」
「うぅ…」
「アズレ…立てますか?」
「身体に力が入らない…」
「みんな!?大丈夫なの!?」
リリスが到着し、2人に駆け寄る。
「気を付けて、アイツ強い。」
「私達2人でも歯が立ちませんでした。」
「大丈夫よ。2人は休んでいて。…あなた、2人にこんな事して許さないんだから。」
「チッ、イーヴィルは倒されたか。」
「名乗るくらいしたらどうなの?」
「あ?名乗っていなかったか。俺はアフリ、アスターの新しい幹部だ。」
「そう、あなたを倒す。」
「やれるものならやってみろ。」
リリスは駆け出し、飛び蹴りを繰り出す。
大振りの攻撃を避けた俺はカウンターを出そうとするが、既に体勢を直していたリリスに受け止められる。
爆発によってその防御は打ち破られるが、大きく距離を開ける事で追撃を逃れる。
「やあ!」
「クソ」
リリスは後ろに下がったかと思えばすぐに攻撃に移り、ヒットアンドアウェイで攻撃する。
実はこの戦い方は爆発の反動で相手の予想外の動きをし、その隙を突くという俺の戦い方と酷似しており、尚且つ戦いの素人の俺はその対処方など知らないというまさに天敵のような戦い方だった。
「チィッ!」
「危ないっと」
俺はこの時に知らなかったが、イーヴィルとの戦いでリリスは相手の隙を見つけ出す事が出来る様になっており、他の2人とは動きの鋭さがまったく異なっていた。
攻撃が当たらずにイライラした俺は挑発する事にした。
これは卑怯なんかじゃないぞ?立派な作戦だ。
「お前、やるじゃねえか。そこで倒れている2人は弱くてな。物足りないと思っていた所なんだよ。」
「2人は弱くなんかない!私の親友をバカにしないで!」
挑発に乗ってきた時は心の中でほくそ笑んだが、効果はあまり無かった。
とは言え、最初よりは動きが単純になっていたので無いよりはマシだっただろう。
「ほらよ。」
「きゃあ!」
挑発作戦の効果もあり、少しづつ攻撃が当たるようになって来た。
元々必殺技を使って消耗していたリリスとそこまで能力を使わずに戦っていた俺、どちらが先に戦えなくなるのかは明白だ。
「はぁはぁ」
「どうした、息が上がってきたじゃないか。」
「クッ…」
どうしてやろうかと思い、能力を発動しようとすると、銃声が聞こえ、銃弾が足元で火花を散らした。
「見つけたぞ!○○!」
「お前は、あの時の刑事か。ちょうどいい、仮を返してやりたいと思っていた所なんだ。」
俺はゆっくりと手を向け、エネルギーを貯める。
「おじさん、危ない!」
「誰かを傷付けさせはしない!」
「みんな!いきますよ!」
「「「マジカル!オーラスパイラル!」」」
罪の無い人を助けるため最後の力を振り絞って合体技を放つ。
「まだそんな元気があったか!」
貯めていたエネルギーを魔法少女達に向け、こちらの必殺技も放つ。
「ダークバースト」
ダークエナジーを爆発させ、そのエネルギーに指向性を加える事で猛烈な破壊力を持つビームとなる。
ピンク、青、黄色の渦と漆黒の奔流がぶつかり合い、目を開けられないほどの強風が吹き荒れる。
俺はついにエナジーが底をついた事を自覚した。
「なるほど、これは厄介だ。」
次の瞬間、俺は押し切られ、大爆発する。
モワモワと土煙が立ち込める。煙が晴れ、俺の姿を見た魔法少女達は顔を硬くする。
「勝負は預けてやる。このままで済むと思うな。」
そう言って俺は追撃されない内に立ち去ったのだった。
「はぁはぁ、勝った、勝ったよ!」
「ええ、リリス。よく頑張ってくれたわ。」
「私達は情けなかったですね。」
「本当にね。2人だったのに翻弄されて…」
「ううん、私1人じゃアフリには勝てなかった。私達、強くならないと。」
「そうね。皆で頑張りましょう。でも、今日の所はちゃんと休まないとね。」
「そうですね。それはそうと、そこのおじ様、お話を聞いてもよろしいかしら。」
マリーは3人の様子を見ていた年配の刑事に声を掛けた。
「ああ、君達には以前も助けてもらったな。」
刑事は佐藤と名乗り、これまでの経緯を3人に話したのだった。
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