第12話霊媒師、和扇の戦い

木村家を訪ねる歌保。


「こんにちは」


「あ~和扇先生」


「佳子様、何かございませんでしたか?

祈祷して居ると、木村様の家と、ご身内の

家の様子が変でしたから」


「あの和扇先生が、来てくれた日に、お札を

頂く前に、主人が車をぶつけて、全損に

なってしまって、あっ!ちょっと待ってくださいね、主人がおりますので、あなた~

この前の和扇先生よ~」


泰造が、偉そうに歩いてやって来た。


「あ~君かね」


「初めまして、和扇と申します、祈祷をしていると木村様の家と、ご身内の家に、何か

嫌な暗示が出ていたので、寄せて頂きました」


「家は変わりは無いぞ!」


すると甥の矢田陽一から、電話が掛かって

来た。


「おばさん、車が大変なんだよ!二台共

ペンキだらけで!」


「今、和扇先生が来てくださってるから

歩いて来れるでしょう?直ぐに来なさい!」


電話を切る佳子。


「和扇先生、先日お伝えした甥の陽一の所が

車二台共、ペンキだらけだそうです!」


「何だ?それは?」


驚く泰造。

ペンキは前日に、歌保が巻いて仕込んで

置いた事だった。


「和扇先生には、それが暗示として伝わったんですか?」


「はい、嫌な空気が流れておりました」


「でも、陽一の所にも、お札を貰ったんじゃ

無かったのか?」


泰造は、不服そうに妻の佳子に聞く。


「貰いましたよ」


「多分、南向きに奉ってくださいと、お願い

したと思うんですが、お願いした事を守って

頂け無かったかと思われます!陽一様が

お見えになったら、聞いて見てくださいませ」


「はい!」


そうこうしていると、陽一と妻の春花が

やって来た。


「もう~車が、無茶苦茶だよ!」


「陽一、あんたあのお札は、どうでしたの?」


「あ~置いて有るよ!」


「何処に?」


「春花、何処?」


「食器棚の上に、有るよ」


「バカ!南向きに奉りなさいって、言った

でしょう?バチが当たったのよ!」


「言った通りに、して頂けなければ、私は

力になれません!では」


歌保は、わざと突き放す様に言った。

佳子は、もう和扇に絶大なる信用をしていたから、敢えて言って見た。


「待ってくれ!待ってくれ!和扇先生!」


動いたのは、まさかの泰造だった。


「何でしょうか?あなたの、お名前は?」


「泰造です!木村泰造です!」


「泰造様、何でしょうか?」


「もう本当に不幸が続いて、この先

どうすれば良いのか?」


「ならば家ごと、お祓いをしますか?お札

だけでは、この悪霊には力が弱いかと」


「家ごとですか?」


「はい、それしか方法は、ございませんね

両家共」


「いくら払えば、お祓いをして貰えるん

ですか?」


「家の大きさによりますが、木村様の家で

5000万、矢田様の家の大きさは?」


「同じ位の大きさです」


「じゃあ1億は必要ですね、その変わり

家ごとお祓いして、私が毎日祈祷します

ので、その後に不安は無くなると思いますが」


歌保は言葉巧みに、弱って居る木村家の人と

矢田家の人を、誘導した。

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