第9話柊の苦悩

「おい!早川、柊は?」


「それが、ずっと居ないんすよ」


「あいつ、何処に行ったんだ?」


権田さんは携帯を、掛けて来た。

私は道場で、座っていた。


「もしもし」


「柊、お前は今、何処に居るんだ?」


「道場です」


「分かった、直ぐに行くから動くなよ!」


「はい」


権田さんが、急いでやって来た。


「柊、お前は何をしてるんだよ!」


「すみません」


「どうした?」


「いや……」


「言えよ!顔に出てるぞ!」


「……権田さん、私は事件に遭遇して解決

する度に、色んな家族を見て来ました

その時に、やはり私達のせいで《復讐の鬼》

に、なってしまった高井さん夫婦を、思い

出してしまうんです、どんなに謝っても

もう無理なのに……」


「柊、俺の背中は広いから泣け、思いっきり

泣け!でも、お前がどんなに謝って叫んでも

元には戻らないぞ!あの夫婦の無念を取り除いてやる事は、出来ないぞ!俺達に出来る事は、2度と、あんな犠牲者を出さない事だ!

だから、お前は今、被害者に寄り添って事件

解決の後にケアを、してるんじゃ無いのか?」


「ウワ~~~~ウワ~~~~高井さん本当に

ごめんなさい、ウワ~~~~!」


悲しい泣き声だった。

権田さんの頬にも、涙がつたう。

私達を探して、やって来た早川は、私の姿を

見て固まっていた。

どれ位、泣いただろうか。


「権田さん、ありがとうございます

高井さん夫婦の様な人達を、出さない為にも

私は、もっと頑張らないと駄目ですね」


「バ~カ、もう十分頑張ってるよ!それを

続けて行ける様に、努力して行こう!」


「はい!あれ?早川?」


「あの、あの、柊さんが泣いてたんで、僕

辛くなって、どうしたら良いのか分からずに

ウワ~ン、ウワ~ン」


「何で、お前が泣くんだよ!」


「だって何だか、辛くなってウワ~ン」


「あ~分かったから、もう泣くな!」


「はい」


「早川、ありがとうね」


「柊、今年も行くのか?」


「はい、私が死ぬ迄、行きます!」


「柊さん、何処に行くんすか?」


「高井さん家族の、墓参りだよ」


「あっ!僕も行きたいっす!」


「じゃあ、今年は3人で行くか?」


「そうですね!そうしましょう!私達の姿を

高井さんの家族に、見て頂きましょう!」


「そうだな!」


「そうっすね!」


「早川は、高井さんに怒られるかもな?」


「え?どうしてっすか?」


「そりゃ~成長して無いからだよ!」


「え~!相変わらずヒドイっすね!」


「ハハハ」


「ハハハ」


そして、私達3人は墓参りに行った。


「高井さん、天国で家族で仲良くしてますか?私は、ちゃんと仕事出来てますか?

少しは被害者の方の気持ちが、分かる様に

なってますか?出来て無い時は、何時でも

叱ってくださいね!私は待ってます!来年

又、来ますね、私を見張って てくださいね

本当に、ごめんなさい」


「終わったか、報告は?」


「はい」


「何すか?報告って」


「柊は、毎年自分の仕事振りを、高井さんに

報告してるんだよ、お前は?」


「僕も報告したっす!」


「何を?」


「権田さんと柊さんが、僕をイジメるので

どうしたら、いいかと報告したっす!」


「早川!お前は本当に、バカか?」


「そうよ!私達が何時、イジメてるのよ!」


「はい!もう2人共、今のでイジメっす!

僕は、もう1回高井さんに、報告します!」


「止めろ!高井さんに迷惑だ!帰るぞ!」


早川は、権田さんに襟首を掴まれて、引っ張って行かれる。

そんな光景すら、今の私には愛とおしく

見えるのだった。

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