見限った男 前

 高校一年の冬、彼女に告白した。俺はクラスでは目立たない存在だ。特に秀でたところはない。彼女は一緒にいて落ち着くタイプ。

 最近は彼女といても落ち着かなくなった。俺が彼女を意識してしまったからだ。モヤモヤしたまま彼女といるのは辛かった。だから告白した。

 告白を受けてくれた時の彼女は恥ずかしそうだったけど、とても嬉しそうだった。



 高校二年の春。平日に一緒にいる事が増えた。昼は友人達と食べていたが、休憩時間や帰る時間を合わせて一緒にいる時間を増やしたのだ。

 休日にデートに行ったりもした。彼女には弟がいたので彼女の家で弟と一緒に遊んだりもした。


 高校二年の夏。夏休みはバイトをしていた。それほどシフトは入れてなかったので彼女の家で勉強したり、近くにあるプールへ弟と3人で遊んだ。充実した夏休みだった。



 高校二年の秋…俺の家に来てくれた彼女と結ばれた。多分…上手くできなかったけど、彼女はとても嬉しそうだった。この日からそういう事をいろいろ勉強しはじめた。



 高校二年の冬。休憩時間に彼女が彼女の友人達と話をしていた。男女が数人いるグループに突っ込む勇気は無い。俺は離れた場所で読書をした。

 あの日からグループで話す事が増えたようだ。友人は大切だ。付き合いも必要だろう。俺はあまり気にしなかった。



 高校三年の春。春休みは彼女と会えなかった。最近、彼女の家に行ってない。弟は元気だろうか…。

 春休みを終えて学校が始まった。久しぶりに会った彼女は…軽くギャル化していた。

 髪を少し染めて制服を着崩している。相談も無くこういう事をされると良からぬ事しか想像できない。

 彼女と話すと恥ずかしそうに似合うか聞かれたが、似合っているとは思わなかったので似合わないとハッキリと言った。 

 彼女の友人達から非難されたが関係ない。俺は彼女の突然の変化に強いショックを受けていた。だから…彼女と関わりたくなかった。その日、俺は彼女と別れた。彼女は泣きながら謝ってきたが、俺には受け入れる事ができなかった。



 高校三年の夏。バイト漬けだった。時間はあるが暇になると余計な事を考えてしまう。ずっとバイトして空いた時間は勉強をした。遊びには一切行かなかったな。

 元カノとはあれから話していない。夏休みの間は会ってないから知らない。



 高校三年の秋。学校で会った元カノは以前よりギャル化していた。髪は金色に染めて肌は日焼けしていた。…もう彼女はいないんだな。俺は心の中で彼女と決別した。

 それからは進学の事で忙しかったので元カノの事は頭から消えた。


 高校三年の冬。そこそこの大学に受かった。地元から離れるので余計な事は考えずに済むだろう。元カノの良からぬ噂とかね…




 大学を出て地元に帰ってきた。大学で彼女は作らなかった。地元に帰ってくるつもりだったから。地元の空気ってなんか安心するんだよね。それなりの会社に就職できて良かった。

 久しぶりの地元。何の気なしに散歩してみる。高校も見に行った。部活を頑張っている学生。ああいう青春も今になると憧れるな。スポーツは人並みだけど。

 野球部員がランニングから帰ってきたみたいだ。校門の前に立っていた俺を珍しそうに見ていく。まあ、目立つよな。部員の一人が近付いてきた。……なんか見覚えがある。

 話してみると元カノの弟。俺より大きくなってた。流石に部活中に話し続ける訳にはいかない。連絡先を教えてほしいと頼まれたので教えてあげた。弟は昔も俺に懐いてくれたからな。

 実家でゴロゴロしていると元カノの弟から電話があった。会って話がしたいと。なんだろう…。あまり良い話じゃなさそうだったけど会う事にした。


 姉と話をしてあげてほしい


 弟から話を聞くと彼女は高校卒業後はずっとフリーターをしているそうだ。高校三年の時から人が変わってしまったと。真面目な性格だったが、今は友人の家を渡り歩いたり、深夜に泥酔して帰ってきたりと荒れているらしい。


 知らん。俺はもう別れた。関係ない。


 弟からの相談なら聞いてやろうと思ったが…元カノの落ちぶれた話とか興味ない。

 愚痴は聞いてやるが相談は聞けない。元カノとはもう他人だから。

 弟は肩を落としていたが俺に礼を言って帰っていった。…昔の元カノに似て真面目なんだな。


 4年後。俺は社内恋愛の末に結婚した。妻と飲んでいる時に元カノの話を強請られたので話してやった。面白くないと思うけど。

 妻は自分が元カノなら…考え始めた。そして、最初は浮気はしていなかった。友人達に薦められるままイメチェンしただけ。で、そのせいで俺と別れる事になったから荒れた。 

と予想していた。

 まあ、真実はわからない。俺は元カノと話し合う気がない。だから、予想は予想でしかない。

 今は隣に妻がいる。だからそれで十分だ。

 

 

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