やり直さない男
彼女が浮気をしているようだ。最近いきなり付き合いが悪くなった。ここ数週間は一緒に帰っていない。メッセージを送っても返ってくるのは夜遅く。彼女の態度が別におかしくなかったので浮気を疑い始めたのは最近だけどな。
放課後、いつも通り帰ったように見せかけて学校に残った。彼女がまだ帰っていないからだ。さて、怪しいところを探してみるかな。
探す事1時間。やっとそれっぽい空き教室を見つけた。中では…ああ…間違いない。予想していた通りの光景。彼女が男と体を重ねていた。…まあ、撮るわな。シャッター音の消し方がわからなかったので動画で撮影した。…自分の彼女が男に抱かれてる姿とか…普通に吐きそう。そのまま撮り続けた。
男は若い教師だ。俺の科目の担当じゃないので名前はわからない。まあ、俺なんかより良い男だな。会話をしているがよく聞こえない。どうでもいいや。
しばらく待っても終わりそうになかったので動画を職員室で見せて帰った。放送で知らない教師が呼び出されていた。多分、あの若い男だろう。
あの教師は懲戒解雇となったらしい。詳細は知らないが、目の前に彼女がいるという事はお咎め無しだったんだろうな…
「おはよう」
「別れよう」
俺はそれだけ伝えて彼女から離れた。言い訳を聞いても仕方ない。彼女とこういう形で別れたが俺は彼女の事が好きだった。好きだからこそ言い訳を聞いて嫌いになりたくなかった。せめて彼女との思い出だけは綺麗なままで…
俺の願いを踏みにじるように彼女は俺に接触してこようとした。無視し続けた。
彼女の友人達に囲まれて屋上に連行された。女ってズルいよな。こういう時に抵抗したら男のほうが不利になるんだぜ?
「いきなり別れて無視とか最低」
「………は?」
いきなり別れてって…そりゃあんなの見たら別れるだろう。
「あの子…ずっと泣いてるんだよ?話くらい聞いてあげてよ…」
「無理」
そもそも泣く意味がわからない。……ああ、浮気相手が俺のせいでいなくなったもんな。
「なんでよ。あんなに仲良かったじゃない」
「面倒だ…これ見ろ」
コイツらは知らないだけなんだろう。なら別れた理由を教えてやればいい。
「……何よ…これ」
「アイツと教師の浮気の証拠」
「……」
「帰っていい?」
「……」
彼女達が何も言わなかったので帰った。全く…自分のした事を隠して被害者面とか。完全に俺が悪役になってるな。
「…ちょっといい?」
「……」
元カノが話しかけてきたのでスルーして帰っ…捕まった。
「なんだよ?」
「……ありがとう」
彼女はそう言い残して立ち去った。なんだってんだ?
彼女の友人達にまた囲まれた。なんだ?相変わらずのコンビネーション。逃げられずにまた屋上に連行された。
「前は…ごめんなさい」
「わかってくれて嬉しいよ。じゃあね」
逃げようとするが道を阻まれた。コイツら…
「あの子…教師に脅されてたんだって…」
「そうか。大変だったな。じゃあね」
体の向きを変えただけなのに先回りされた。…ああ、コイツらバスケ部だった気がする。
「誰かが教師を辞めさせてくれたって言ってたけど貴方だったって知らなかったみたいで…」
「……………?」
職員室の教師は俺からの密告だと伝えてなかったと。ああ。なるほど。だから彼女はいつも通りだったのか。
「あの…やり直してあげてくれない?あの子は脅されてただけで何も悪くないの」
「彼女は付き合いが悪くなってる間もいつも通りだったよ」
「え?」
「つまりさ。教師との肉体関係がある事が彼女のいつも通りになってたんだろ?」
「だから…それは脅されて…」
「黙って従ってても解決しなかったからそれがいつも通りになったんだろう。諦めた時点で受け入れたんじゃないの?…ずっと浮気してたって事だろう?」
「……」
「そもそも復縁要請に君達が来る事がおかしい。文字通り話にならない」
「ごめんなさい」
「俺の事は放っておいてくれ…彼女の話をするのも辛いんだ…」
「……」
「じゃあな」
脅してた教師が1番悪いのはわかってる。彼女に選択肢が少なかった事も。だけど彼女は従うという選択をした。従うなら従うでそこでまた選択肢があったはずだ。…今更か。すぐに気付かなかった俺も彼女の事は責められないな。
それから彼女との繋がりは消えた。噂ではアイツと会っているらしい。また脅されているのだろうか?まあ、噂になるくらいだ。また受け入れているんだろう。戦い方なんかいくらでもあるのに…脅されたから受け入れる。彼女みたいなのがいるから脅迫は有効だと思われやすいが…脅迫した時点で罪なのだ。まして脅迫からの強姦は執行猶予無しで即逮捕。未成年だから更に追加。学校側が穏便に済まそうとしなければ逮捕されてた。
つまり…今回は学校も悪い。犯罪者を放逐しただけなんだから。解雇済みなので無関係と押し通るのが目に見えてるあたり学校の闇も深いねぇ。
本当に…彼女は危なっかしいな。やり直すつもりはないが付き合っていたよしみで少し助言してやるとしよう。
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