奪われていた男
彼女の様子がおかしいと思った時には既に手遅れだった。いや、とっくに終わっていたのだろう。
高校から付き合っていた彼女。今は大学の3年だから約5年は付き合っていた。いや、実際に一緒にいたのは半分もないのかもしれない。
3年になってから彼女と会う機会が減っていった。それでもたまに会っていたし、会った時にサークルでやる事が増えたから少し忙しいと言っていたので仕方ないと思っていた。
夏くらいになっても彼女は忙しかった。メールの返事も返ってこなくなった。おかしいと気付いたのはこのあたりからだ。
彼女とはメールのやり取りだけはちゃんとしようと約束していた。会えない時でもメールで連絡を取り合えば安心できた。
彼女の家は電車や徒歩で合わせて1時間くらい。何度も行った。電話はコールはしてるが繋がらなかった。連絡が欲しいと何度も留守伝に残した。
彼女の大学にいる知り合いに連絡をとろうとした。高校の時のクラスメイト。コールはするが繋がらない。知らない番号だから警戒されてるのかな。再度かけてみるがブロックされたようだ。俺は大学の知り合いに頼んで彼女の大学に通っている人と連絡をとってもらった。
彼女は夏に大学を辞めていた。最後に見た時は妊娠していたと…俺は何も聞いてない。
腑に落ちない。俺が電話をかけた奴は何か知っているのだろうか。俺は奴に会いに行く為に彼女の通っていた大学に向かう事にした。行く途中に彼女に電話した。妊娠したって聞いた。連絡を下さい。留守伝に残したが聞いてくれるだろうか。
彼女の大学前で出てくる学生を見続けた。今日で3日目。高校を卒業して3年も経つと見てもわからなくなってるかもしれないと思ったが…奴の事はすぐにわかった。俺の顔を見て逃げ出したからだ。追いかけて捕まえた。頑なに話そうとしない。でも話してくれなきゃここまで来た意味が無い。
少し乱暴な手を使って話を聞き出した。コイツが彼女を妊娠させたらしい。高校の頃から隠れて付き合っていたと。俺が浮気に気付いていないか確認する為にメールをさせていたと。妊娠したから別れたと。話をするたびに奴に怪我が増えていく。話を聞く度に自分の中の怒りが大きくなっていくのがわかる。
最後の話を聞いた後に頭を掴んで奴の顔を壁に叩きつけてやった。奴はそれっきり動かなくなった。
一息ついて俺は彼女にメールした。
別れよう。
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