第十六節

 私は、初夏の陽気に包まれた今日、今度こそ死のうと思う。ひなの所に早く行きたいのだ。私だけがのうのうと生きていてはならないのだ。

 さて、ここで筆を置くことにしよう。この文章を誰が読むかはわからないが、私達の物語はこうして終わっていくのだ。終わらせたのは何者でもない、君達なのだからと。

 完全に理解しろとは言わない。だけど、お願いだから否定はしないで欲しい。するなとは言わないけど、声には出さないで欲しい。それだけで私達のような人々は救われるのだから。

 ひな、待っててね。もうすぐ行くから。それじゃ。


 ――憂節みくり。

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