親愛なるあなたへ

 苦しみながら三月みつきひなは隣で枝が折れる音を聞いた。成功だ、愛する人を生かすことが出来た。わざと強度がギリギリ足りなさそうな枝を狙うことで最愛の人である憂節うきふしみくりを生かそうとしていたのだ。

 本当は二人で死にたかったのは限りなく本音に近い。だが、日々が過ぎていく中でそれよりも上回る恐怖がひなを襲ってきた。

 ひなはみくりに、私の事を忘れて、新しい恋をして欲しい。そしてまた愛して、愛されて、そして苦しんでしまっても良い。私はそれをずっと見守って、そして苦しむのだろう。と考える。

 そのうち私の意識も途絶えるだろう、とひなは考える。その後脳に酸素が送られず――と言った専門的な話はもうどうでもよく、ひなが成功し、みくりが失敗すれば良い。

 さぁ、さよならの時だ。頭を打ち付け気絶したみくりにバレないようにひなは涙を流した。さよなら、愛した人よ。また会えるその日まで。


 おやすみなさい、良い夢を。

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