第十五節

 そうして、私達は死ぬための準備を始めた。死ぬためにはまず身辺整理がつきものだからだ。そしてそれらしい遺言も残すことにした。これは理解のない人に対する挑発文にもなった。

 自殺をほのめかす必要はなかった、あくまでも私達は勝ち逃げをしてしまうために死ぬのであって、不幸に死ぬわけではないのだから。

 私は死ぬ方法を調べた。同時に死ぬとして一番確実なのは首吊りだろう。ハングマンズノットと言う結び方を知った。何回か結び方を練習し、強度に関しても色々な文献を調査して、実証して、うまく行けると確信した。

 そして私とひなは最後の冬を共に過ごした。二年にも満たない生活だったが、とても充実した人生だった。あぁ、これでずっと二人で居られるんだと思いながら毎日を寝て過ごした。

 ――結果としては私の敗北で終わるのだが。

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