閑話休題Ⅲ

 三月みつきひなは周りから見た性格に反して寂しがり屋である。それは幼少期に姉を亡くしているのがあるのではないかと憂節うきふしみくりは推測していたが、今となってはその真相を知るものは生きていない。

 ひなとみくりの身長差は十センチかそれ以上である。お互いが並んだとしても背伸びしなければ目線は合わせられない。その為ひながみくりを抱きしめる際は顔を胸にうずめる形(誰にも言わずにいたがこれはひなにとってはお気に入りだった)になる。

 周りから見ればみくりは落ち着いてひなを見守る良い姉のような存在で、ひなは姉に懐き自然と守られているような構図になっている。これもまた二人の関係性を隠蔽いんぺいするのに役立った。親友のような姉妹のような関係性を構築していくことで周りからの目を欺いていたのである。

 こうして二人は周りの視線をあまり気にせずのびのびと二人一緒に居ることが出来た。

 ひなの死後にみくりの隣に誰も居ないことに誰しもが違和感を拭えなかったし、それは半年、いや一年以上続くのかもしれない。

 それを一番実感しているのは誰でもない、憂節みくり本人なのは自明だ。

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