第九節

 また季節が過ぎ、冬が訪れた。私はひなをクリスマスに誘った。「一緒に過ごさない?」と言うとひなは快諾した。「うん、私だって一緒に過ごしたい」と。

 私達はクリスマスイブと当日にかけて、私の家で初めてのお泊りになることになった。私は寮生活が嫌なので一人暮らしを選んで良かったなと思ったし、快く許してくれたひなのご両親もとてもありがたかった。

 とは言ってもひなは複数人でパーティーをすると言って出てきたので手土産に持たされた大きめのホールケーキを見て二人で笑い転げたのも、未だに覚えている。少し形がグチャグチャになっていた、あの形でさえも鮮明に覚えている。

 進学のために引っ越した時は当然ながら誰かを家に泊めるだなんて思う訳も考えも、その気すらもなく小さく狭いシングルベッドに二人で寝ることになったのだが、隣にいるひなの髪から香るシャンプーがいつもとは違い私のシャンプーであることに違和感を覚えながら、それでいて心地いいと思った。

 そして、その日私達は初めてのキスを交わした。その感触だって――嫌という程覚えている。その唇の形も、温もりも、柔らかさも。

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