第七節

 高校一年の時の私とひなの夏休みは充実した物となった。派手なことはせず、のんびりとお互いがお互いのしたいことを交互に繰り返して行く日々を過ごした。ひながショッピングに行きたいと言った日はショッピングモールに出かけるし、私が読みたい本があると言った日は二人で図書館で一日中無言で本を読んだ日もあった。

 そうやって、私達はお互いにお互いの欠けている所を上手いこと補いながら過ごしてきた。夏休みが明けると私とひなの仲の良さはクラスメイトの間では二人は親友になったと言う事で処理された。それもそうだ、誰も恋仲になっているとは思わないだろう。

 ひなは決して危険な行為を取ろうとはしなかった。学校内では親友以上の行為を取ろうとはしてこなかった。逆に私はわざとバレそうでバレないようにひなを独占しようとしたり、頑なに隣を譲らない時もあれば抽斗ひきだしの中にこっそりと手紙を入れて気付いたひなの顔が赤くなるのを見ていることもあった。

 そうこうしているうちに季節は過ぎ、秋が来ようとしていた。来る冬へ向けた準備の期間(とは言えそれは一年後なのだが)がやってこようとしていたことに私達はまだ気付いていなかった。

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