第四節

 十二月後半、イルミネーションが段々と点く季節に私達はわざわざ遠方にも行かず近所の駅の小さいイルミネーションを三時間程無言で眺めていた。ひなはずっと笑顔だったし、私はそれがいつも通りで心地よかった。

 それ以外にも色々やった。冬休みを利用して日帰りで旅に出て温泉に入ったり、夜にこっそりと抜け出して二人で永遠と歩いた日もあった。あの日はひなが私のコートのポケットに手を突っ込むものだから私はその手をポケットの中で握り返した手の冷たさも覚えている。

 こたつに入って寝落ちして二人して汗だくになった日も、寒い中食べたソフトクリームの味も、冷たく吹き抜けていった春一番も、何もかもを覚えている。身体中が、五感が覚えている。

 こうして私はひなを失い、独りだけ生き延びてしまい、その罪悪感を抱えながら生きて行くのである。

 これは、春の暖かい陽気の中の、天国に見せかけた地獄の物語だった。

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