第三節

 そうこうしている間に春休みは終わり、私は退院し高校に復帰することになった。ひなの座るはずだった机には花瓶が置かれ、数々のお菓子が添えられていた。それが、苦しくて苦しくて堪らなかった。

「みくりちゃん」とクラスメイトが声をかけてくる。私とひなの仲の良さは周知の事実であり、当然のことだろう。私は「うん、私もびっくりしちゃって」とだけ返した所で涙が止まらなくなりそれ以上は誰も何も聞いてこなかった。

 学校側の配慮により私の自殺未遂はクラスメイトには伝わらなかった。それはある意味では救いになった。私達が交際していた事は誰にも打ち明けていなかったからである。なぜ打ち明けなかったか、それは半年程前の同性愛者に関する授業で周りの反応があまりにも恐ろしかったのもあるし、わざわざ言う必要もないなと二人で判断したからでもある。

 そのような事があり、私達は未来に対して絶望し、お互いの意志で死を決意したのが十二月に入った頃だった。「みくりちゃん、桜が咲く前に死んじゃおう」とひなが言ったのは今でも鮮明に覚えているし、私もそれまでにやりたいことは全部やろうと言った記憶は鮮やかに残されている。

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