第4話 瑞葉と朱里 二
成城学園前駅に着いた。駅からそれほど遠くないところに
近くのコンビニで飲み物とお菓子を買って帰る。二人で飲み物を飲みながら、
「くつろいでね。さっきコンビニで買って来たもの以外何もないけど」
瑞葉が微笑む。緊張する。
「シャワー使ってもらっていいからね。お先にどうぞ。疲れてるでしょう。これ着ていいから」
バスタオルとスウェットの上下を渡してくれた。バスルームもいい香りがする。
瑞葉がシャワーを浴びている間に果物を
「いやじゃなかったら、食べててね」
さっきはコンビニで買ったもの以外、何もないと言っていたが、オレンジとキウイとリンゴがお皿の上にあった。
そう言って
しばらくして
「おいしいでしょ」
頷く瑞葉。
演劇部内の誰々は誰々と付き合っていたとか、そんなことを教えてくれた。普段、誰とも付き合いがないような
瑞葉が入ってくる前、慈代さんは誰かと付き合ってたようだけど、すぐだめになって、恵人と付き合い始めたのは、ついこの前だというのも教えてくれた。
「瑞葉ってさあ。男の人と、そういう経験はあるの」
あまりに単刀直入な質問に戸惑った。
「
「質問返し? ……でも、それには応えなきゃね。……あるよ」
「大学に入ってからですか?」
頷く
「高校の時から付き合ってた人がいてね。そういうことになったんだけど、でも、なんか違うかなって思って。結局、すぐ別れた」
「そうですか」
「瑞葉は?」
「私もあります、大学入ってすぐ、私も高校の時から付き合ってた人……でも、なんか違うって……私もそう思って」
「そうなんだ。なんか似てるね」
微笑む
ベッドに横になりながらテレビのチャンネルを変える。
「
瑞葉も
少しの沈黙が流れた。
「ところで悩みって?」
瑞葉は二人っきりで改めてそう聞かれ緊張した。来る前は
微笑む
「いいよ。なんか恥ずかしいことだったら。別に言わなくても」
顔を赤らめる瑞葉。
「じゃあ、私が聞いてあげる」
「あの時、慈代さんを好きになった……」
どう応えていいかわからなかった。
「そう思ったけど、実は慈代さんじゃなかった……」
ドキッとした。
「慈代さんじゃなくて、自分は……」
心臓の鼓動が高鳴る。
「大丈夫よ。私もわかるから……」
「こういうの……嫌なら、嫌って言っていいんだよ……」
首を振る瑞葉。
「あなたの相談って、こういうことでいい?」
瑞葉は目を閉じた。夢ではなく、初めて女性と愛し合った。優しく滑らかな指先が瑞葉の身体をなぞる。優しい感触。男性の手ではない感覚。触れる感触も力もすべてが繊細だった。
朝日の中で朝食のトーストを焼いてくれる朱里。その音で目が覚めた。
「おはよう。よく眠れた?」
微笑む朱里を見ていると、なにかまったく後ろめたさのようなものはなかった。テーブルにトーストとチーズ、オレンジジュースを並べてくれた朱里に、瑞葉は後ろから抱き着いた。
「どうしたの?」
「なんでもないです」
「……そうでしょ」
「また来てもいいですか?」
「もちろんよ」
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