445 下っ端が謝りに来た、ということか

 さて、いよいよ決戦だ。

 シヴァは色々と準備を整えると、一人でタクララン国の砂漠の真ん中に来た。無人地帯なので多少大きな魔法を使った所で影響が少ない場所である。


 そして、タープを張り、その下にソファーとテーブルを用意してから、【ぐーるぐる】を操作して「シヴァを転移させた超越者たち」の居場所を探る。


 ……難なくヒット!

 この世界にはいないが、近くの次元にはいるのでしっかりマーキングしてから魔力で干渉を始める。

 複数の超越者たちだが、場所は大して変わらない。

 三橋マナ関係の一体は他より離れていたが、こちらも逃がすワケがない。

 超越者専用の異次元スペースみたいなのがあるらしい。

 まぁ、神的存在なら天国、天上界、みたいな所か。

 世界を見渡す見張り台、展望台、という認識でも大差ないだろう。



――――――――――――――――――――――――――――――

 損害賠償請求書


 私…通称シヴァ(本名・川瀬英樹)は20XX年六月一日前後頃(こちら時間)、A県N市○町の自宅マンションから、突然、強制的に魂だけ異世界に連れて来られ、アルトという名の死体に魂を入れられました。

 これにより、妻や家族や友人といった多数の人々に心配をかけ、仕事も無断放棄になってしまい、方々に迷惑をかけ、挙げ句の果てに元の世界に帰るに帰れなくなってしまいました。

 そこで、私は元凶たる貴殿方に対し、この損害を早急に賠償されるよう請求します。

 要求するものは以下の通り。


・心からの謝罪と誠意ある対応。

・賠償になるような魔法誓約やアイテム。

・転移させた目的を教えること。


 なお、本書面、到達後、一時間以内(こちらの現地時間)に何の連絡もない場合、要求が呑めない場合は、交渉決裂と判断し、どんな手を使ってでも殲滅に行くので覚悟しておくように。

 尚、この世界の神々の加護と助力を頂いたので、二度とこちらに介入は出来ません。

――――――――――――――――――――――――――――――


 魔力で繋ぎ、この手紙を送った。

 魔石粉を溶かしたインクでこの世界の共通語で魔法紙に書いたので、たとえ、宇宙だとしても文字が消えることはあるまい。


 千里眼はもちろんのこと、妖精女王、精霊王、神様ですら覗けないようにしてあるダンジョン内や『ホテルにゃーこや』では返事が届かないので、シヴァはこのままここで待つ予定だった。

 ソファーに座り、優雅にお茶して。


 冒険者装備ですらなく普段着なのも余裕だから、ではなく、余裕に見せている、のである。

 しっかりと戦闘準備はしてあった。

 そもそも、精神生命体だろう超越者たちに物理攻撃は利かないだろう。ダメージを与えるのなら……。



 …。

 ……。

 ………。

 …来た。

 テニスボールぐらいの水晶のようなほのかに光る球体が、空からふわりと降りて来て、シヴァの向かいの席、目線ぐらいの高さに浮かぶ。

 ものすごく見覚えがあるのも当然で、ダンジョンコアと一緒のものだと鑑定様もおっしゃってる。

 つまり、精神生命体の超越者なので、本体を守るための憑依体としてコアを使っているのだろう。

 下っ端が謝りに来た、ということか。


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