441 味の玉手箱や~とか言っとけばいい?
武装を整える前に、とシヴァは【ぐーるぐる】で同じ世界の近場の穴子を検索。
モドキも含めたおかげか、ラーヤナ国西にある海の南側で多数ヒット!
暖流で育つ魚だが、シヴァが思うよりもっと南だったらしい。
【ソッティーレグロンゴセルペンテ・蛇系魔物。異世界のイタリア語で『長細い穴子蛇』という意味。あっさりした身がふっくらとして美味い】
……まぁ、こちらでの分類は魚ではなく、やはり蛇らしいが、美味しければ問題ない!
シヴァはラーヤナ国西の転移ポイントまで転移で移動し、そこからは騎竜で移動し、水中装備に【チェンジ】し、そのまま海へダイブ!
太さは元の世界と大して変わらないが、長さは3mもあった!
まぁ、魔物なので攻撃手段は必要ということだろう。
わらわらと集まって締め付けようとして来るが、ステータスの高いシヴァはその程度ではどうにもならない。
これ幸い、と大半は水魔法で頭をぶち抜いて収納、生きたままの穴子も海水ごと影収納に入れる。ダンジョンで養殖出来たらいいが、どうだろうか。
キエンダンジョンの自宅へ帰り、早速、
「……………」
美味い、美味過ぎた。
感想なんて声に出して言えないぐらい美味かったのだ!
蒲焼にした異世界穴子は!
ちょっと欠片を味見しただけでこれなら、寿司にしたら…とシヴァはささっと寿司を握る。
シャリは少なめ、穴子は大きく。元々大きい穴子なのでどうしても大きくなるのだが、ともかく!
じーんと涙目になって感動するぐらい、穴子の寿司は美味かった!
誰もが想像する穴子の味なのだが、ふっくらとした身、豊かな滋味?がかなり違うのだ!
…まぁ、魔物なので魔力が含まれている辺りが一番の違いなのかもしれない。
美味しい表現の
味の玉手箱や~とか言っとけばいい?
「にゃーこたちもありがとな。焼き方が上手いおかげもあると思う。この美味しさは」
「にゃにゃ」
どういたしまして、な鳴き方である。
たびたび、うなぎその他を炭火で焼いてもらっており、にゃーこたちはちゃんと学習するので間違いなくプロ級だった。
元の世界なら『カリスマうなぎ職人』として一世
…いや、にゃーこの姿形と愛らしさだけでもとうにアイドルか。
「うん、同感!…あ、キーコちゃん、穴子、ダンジョンで出せるの?」
【はい、お任せ下さい。穴子はこれでしたか。蛇系魔物だと思っておりましたが…】
この穴子も蛇系魔物分類で、蛇系魔物はものすごくたくさんいるので、キーコが思い当たらなかったのも仕方ない。
「そうそう!長細いってだけで間違えられてるんだよな。うなぎも」
うんうん、と頷きながら、穴子の寿司を楽しむ。
せっかくなので、他の握り寿司も作ったが、間違いなく主役は穴子だった。
******
少し前まで、アカネは自宅の会議室(別名:司令室)にて、各ダンジョンのコアたちとモニター会議をして決戦準備をしていた。
普段は『にゃーこや』の新しい商品の提案やめぼしい情報の取りまとめ、新薬実験の結果や進捗状況といった平和的利用なのだが……今は決戦準備……。
マジで
アカネに任せておけば間違いないのは分かっている。
幸運Aというだけじゃなく、相手の弱点を
魔法紙や【ぐーるぐる】の使い方といい、シヴァが見逃していたことを。
一応、シヴァも会議内容は通信バングルを通じて聞いている。
……いや、もう、ね?一番怖いのはアカネだよな、としみじみ改めて思い知るワケだ。
…ああ、そうだ。思い出した。…思い出してしまった。
怖くて忘れてしまいたかったので敢えて忘れていたのだが、そう、あれはシヴァたちが予約していた結婚式場に、妬んでキャンセル連絡を入れたアカネの不出来な
おかしいと思った結婚式場の担当者が連絡をくれたので、大事にはならなかったものの……。
普段、温厚な人程、怒らせると怖い、とは本当によく言ったものである。
それはともかく、いつ声をかけよう……。
殺伐としてるだけに、下手に声をかけられない……。
いや、しかし、せっかくの寿司だし、アカネもそろそろお腹が減っただろう。
あ、そうか!
別に声をかけず、寿司桶とお吸い物とお茶を持って行ってアカネの前に置けばいいだけか。
もっと後でいいなら、時間停止のマジックバッグに収納するだろう。
シヴァはそう思ったのだが、行動する前に、アカネとコアたちとのリモート会議で過激な武装準備がエスカレートし、この大陸自体をうっかりふっ飛ばしそうな話になったので、慌てて止めに入ることになり、やっと食事にしたのだ。
穴子の美味しさにアカネの気分も和らいだようで何より。
一番温厚なのはやはり、シヴァだろう。
異論は認めない。
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