最終章・金属バット用意!

438 ただのおとぎ話ではない

 さて、ギレンの使い魔妖精マルティカのおかげで、いい情報が入った。

 エルフの里はヒマリア国東南、カウラナ王国との国境堺、ラーヤナ国の国境にも近い山の森、らしい。

 こちらも情報を集めていたが、推測程度の情報だったし、別に急いでいなかったので後回しにしていたが、やはりか、といった所だ。


 あまりに遠い場所なら、エルフの里を出て来たエルフがラーヤナ国、エイブル国まで来ていないし、エルフのSランク冒険者も活躍する場所が中々ない。

 ヒマリア国は小さいダンジョンばかりだからだ。


 では、とシヴァはエルフの里に近い転移ポイントに転移し、後は人工騎竜でエルフの里がある山へ。

 隠蔽がかけてあったが、その辺の国の魔法防御よりはマシという程度で、シヴァから見れば、どんぐりの背比べであった。隠蔽がかけてあることで返って分かり易い。悪目立ちしている、とも言う。


 シヴァは破ることなくするりと影転移で里の中へ入り、念のため影の中から様子を窺ったが、里の中には特に何も仕掛けていなかった。

 長寿で閉鎖的なエルフの里でも、魔法レベルの低下は深刻化しているらしい。

 エルフの里は山の中だが、当然、ある程度切りひらいてあり、自然に溶け込むようにか、木々を使った家が多い程度で、畑や川もあり、他の村と大差なかった。


 他の村とはちょっと違う所は、高台に石造りのしっかりした屋敷?砦?みたいなのがあることだ。

 いかにもお偉いさんの住まいっぽい。


 シヴァ本体は影の中で隠蔽した飛行カメラを十数台飛ばし、その情報の取りまとめと司令塔、調査は分身五人にさせた。

 欲しいのは【道標の珠みちしるべのたま】と弓師のSランク冒険者についての情報だ。


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 道標の珠みちしるべのたまというレア中のレアアイテムがある。

 その珠は何かの素材と合わせてマジックアイテムにすると、あらゆる物、人、場所、伝説の武器やアイテムまで探すことが出来る。

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 エルフの間でそんな風に伝わるおとぎ話なので、何らか詳しい情報があるハズだった。

 ただのおとぎ話ではない。

 【道標の珠】は現存する。


 シヴァが意識だけ転移して二ヶ月半ぐらいの時、偶然、キラキラ宝箱を手に入れ、そこから【道標の珠】を手に入れたのだ!

 シヴァの鑑定様も同じ内容が出たので、エルフのおとぎ話というだけじゃなかった。


 【道標の珠】と【賢者の石】【オーブ】【虹貝の貝殻】ガラス、鉱物その他を使い、何でも探せるマジックアイテム【ぐーるぐる】を作ることは、まだまだ素材が足りず出来なかった。命名はシヴァである。

 探すだけじゃなく、ナビ機能も地図表示機能もあるので、元の世界の有名検索エンジンのモジリだ。これ程、ピッタリな名前はない。


 足りないのは【星のかけら・隕鉄】。

 その当時は、素材も足りないし、タイミング的にも胡散臭うさんくさかったのでスルーしたが、時間的余裕が出来たので調べてみよう、なのである。


 何でも探せるのが本当なら、シヴァとアカネが元いた世界を探すことも出来るのだ!

 徐々に絞れてはいるのだが、パラレルワールドが多過ぎるし、元の世界に渡るには時間軸も考える必要があった。


 こちらの世界の方が時間の進みが早い、或いは渡る途中の時間の進みが早く、アカネと自分の身体を取り戻した時、あちらでほんのひと呼吸程度、こちらでは三時間もかかってしまっていたのだ!

 現に体験した後だと、そう簡単に異世界に渡れない。


 まぁ、自由に渡れるようになったとしても、もう元の世界には帰らない。

 帰れない、ではなく、帰れるようになったとしても

 こちらの世界でもかなりの規格外で寿命もかなり延びているが、そうじゃなかったとしても、こちらでも大切な人たち…人外も含めて…も出来たし、自由気ままに快適生活をしているので、もう元の世界で窮屈に生きられないからだ。


 なのに、元の世界を探しているのは、家族や友人たちに手紙ぐらいは送ろう、と。

 シヴァの身体がなくなり、アカネをこちらに連れて来たことで、「ああ、自力で何とかしたんだな」で、もう全然心配してないような気がするが、それはそれとして。


 それに、元凶らしき超越者たちの思惑に乗らなかったので、乗った場合…素材を集めて何でも探せるマジックアイテムを作った場合、どう対応するのかも興味がある。

 当然、シヴァは殴る気満々だ!


 そして、作ったマジックアイテム【ぐーるぐる】はそれはもうかなのり有効活用が出来る。まだまだこちらで探している食材は多いのだから。


 ちなみに、この辺のことはアカネも了解しているし、同じ意見だった。

 こちらで自由気ままに生活した後では、元の世界の生活はやはり、窮屈過ぎていた。

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