418 今日の夜はカエルカレーだ!

 護衛依頼二日目。

 今日はケパレーの街との中間地点ぐらいで野営になるので、昨日よりしっかりと狩りをしつつ進んだ。

 シヴァたちの料理の腕を知っても、ソウザは一度食べてはいても、やはり高いと思うらしく、ソウザたちは頼んで来なかった。


 朝は人目もなかったため、作り置き料理を活用した和定食、昼は土魔法で作った簡易石窯で野鳥や川エビや山菜を使ったピザや野菜を焼いたので、ぐぬぬぬぬ、とソウザたちは歯がみはしていたが。


 おやつ時間前に雨が降って来た。

 降りそうな天気だったので対策は万全。

 護衛四人は全員、雨よけのマジックアイテム利用なので馬も含めて濡れない。

 合羽のフードがないだけに視野が広がり、当然ながら戦い易くもなる。

 やはり、出て来るのだ。水棲魔物が街道に。


 今日の夜はカエルカレーだ!とリミトとサーシェだけじゃなく、アカネとシヴァもさくさくと狩る。

 パサパサして美味しくない、と大半の冒険者に思われているカエル肉だが、本当に調理次第なのだ。カエルの皮は大して使えないが、粘液や胃袋は色んな活用が出来ることもある。


 アンギーラスネーク…うなぎも川が増水したらしく道まで出て来たので、もちろん、速攻で狩った。土礫で頭を撃ち抜くとさばき易く、身は傷もなく美味しく頂ける。


 雨と魔物の排除をしていても予定に遅れることなく、予定通りに空き地で休憩になった。


 天幕を張る。

 雨よけのマジックアイテムを使ってるのを知られるのは別にいいが、結界を張れることはあまり教えたくないので。

 今日のおやつは桜餅、もどき。

 桜の木をまだ見付けてないので食用葉の塩漬けで代用したものだ。どら焼きのようにくるっと巻く道明寺タイプではなく、ピンクに染めたもち米の中にあんこが入ったタイプである。


 おはぎはおやつで出してるし、みんなで作ったことがあるのでリミトとサーシェは驚かないと思いきや、塩漬けの葉が入っただけなのに違った味わいに驚いていた。


「大福と豆大福は別物かもと思うような感じ?」


「だな。『もどき』なのが惜しい桜餅だけど」


小豆あずきももっと小さいものがあれば、また風味も変わると思うんだけど、こっちの植物って総じて大きいし」


 魔力のせいなのか、月がないせいなのか分からないが。


「これ以上美味しいものがあるのっ?」


「以上っつーか、バリエーションだな。この先は好みによる。食材自体がこっちの方が美味いんだよ」


「うん。故郷では狭い国土を開発しまくってたから、土地の力?自体が違う感じ。土を使わない水耕栽培とか室内で昼間を再現したLED栽培とかもやってたけどね。日照時間が長ければ、早く育って栄養価が高くなり、虫被害もなし、と色んなメリットがあるの。初期費用はかかるけどね」


 今もダンジョン農場で似たようなことを大掛かりにやっている。


「やっぱり、デメリットはあるんだね」


「それにしても、この先、坂でしょ?馬車の車輪、滑ったりぬかるみにハマったりしない?」


 サーシェがそんなことに気付く。山に登るので坂は当たり前だった。


「さり気なくサポートするから大丈夫」


「さり気なく馬車に浮遊か重量軽減の魔法陣を刻んじゃえば?」


「…Aさん、どの辺がさり気ないのか教えて欲しい…」


 リミトがツッコミを入れた。


「見付からない場所にさり気なく。錬金術で元通りに消せるから問題なし」


「あんまり強力なもんじゃなくていいから、ここは開発中のスタンプ式魔法陣を試してみるべきだな」


「す、スタンプ?はんこみたいに押すヤツだよね?」


 サーシェが確認を入れて来る。


「そう。魔力流してぺったん、と。短時間限定ならこの程度で平気」


「荷運びの人とかすごい欲しいんじゃない?」


「デメリットがいつ解除されるか分からねぇ所。急に重くなったら馬も驚くし、暴れるかもしれないから、何があっても対応出来る人が立ち会う必要がある」


「ダメじゃん…」


「だから、開発中ってワケ。多少軽くする程度なら直径5cmでいっか」


 重量軽減魔法陣スタンプは大きい物しか作ってないので、シヴァは作業台を出してさくさく作る。


「…今作ってるし」


 雨で滑り易いのは確かなので、出発前の荷馬車にアカネがさり気なくスタンプしておく。どのぐらいの魔力量で何分保つかも計るのだ。

 あれ?という顔をしたのは荷馬車を引く二頭の馬で、軽快に走り出す…には天候が悪いが、そこそこ機嫌がよくなったのは確かだ。


 多少軽く、程度なので効果が切れても馬は暴れなかったが、えー?何で?みたいな顔で振り返った。どこかにひっかかったと思ったのかもしれない。


 スタンプを押す人も交替で色々検証しつつ進み、水棲魔物が街道まで出て来るのもかなり治まって来た。上り坂なので麓の方に流れている。

 スタンプのおかげもあって、遅れることなく、野営予定の空き地に到着したのはまだ明るい時間だった。


 雨も大分治まって来ているが、小雨はまだ降っていたので、休憩の時と同じく天幕を張る。今度は馬の分もだ。濡れる所では馬も可哀想なので。馬車の馬も入れてやる。

 馬の手入れと餌をやると、夕食準備に入る。

 予定通りにカエルカレーだ。


 夕食後、寝る頃には雨が上がったが、シヴァたちは最初から夜番をするつもりはない。考えていた通り、【幻影】を作って映しておいた。

 リミトとサーシェには苦笑されまくりだったが、ちゃんと見えるように安心させるのも護衛の仕事なのである。

 しっかりと結界も張ったので、まったく何もなく、快適に熟睡した。



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新作☆「番外編44 育ての親心、白鷹獅子知らず」

https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093074635349833

コラボ4コマ(18,19,20,21)

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