409 なんだかじんせいそうだんになってきたね

「ぼくたちみたいな小さい村出身の子でも、強い冒険者になれる?」


「難しい。戦い方も知らねぇし、知識もねぇし、ちゃんとした武器や防具やポーション類もロクにねぇから。でも、どんな環境でもやれることはやって、諦めずに努力して強くなる冒険者はいるぞ。ごく稀に。百人いたら一人もいない、千人に一人いるかいないかぐらい稀に」


「諦めず努力しても、大怪我して戦えなくなる奴も多いよな。おれも一応、その『稀』に入ってるかも」


「マンダルもCランクなんだから『かも』は抜かしていいだろ」


【だよね~】


「他人事っぽいけど、お兄さんは?」


「おれは除外」


【きかくがいすぎるからね。てんさいだし、さいのうもあるのに、ちゃんとどりょくもしてるし。っていうか、べんきょう、すきすぎ】


「いいだろ、別に。まぁ、安全に金持ちになりたいのなら、冒険者よりしっかり勉強して商人をやった方がいいぞ。地道にコツコツやることが成果に繋がるからな。行商はリスクが高いけど、安く仕入れて高く売れる場所で売るのが商売の基本」


「そうなんだ。でも、どうやって勉強したらいいのかも分からないんだけど…」


「親に訊け。親が教えてくれねぇのなら、村でも偉い人に訊け。それでも分からないのなら、大きい街に行って商業ギルドで訊けばいい。商業ギルドは商売やる人を保護し、手助けもしてくれる所だから、見習いの斡旋もしてくれるぞ。ここが信用出来ないのなら、どこも怪しい」


「じゃ、村から出た方がお金持ちになれるってこと?」


「ああ。ものすごく育て易くて美味しくて日持ちもする野菜の特産品でも作れば別だけど、そういった商売の種も中々ねぇだろうしな」


「村の近くで鉱山でも見付かったら栄えるんじゃないのか?」


 マンダルが口を挟んだ。


「ならねぇな。村の近くではあっても鉱山は国か領主のものだろ。鉱山最寄りの村ってことで人は来るだろうけど、荒らされるだけだろうな。

 そもそも、鉱山を持ってても人手と資金がなけりゃ、掘り出したり運搬したりも出来ねぇし、それから加工して販売しねぇと金にはならねぇんだぞ。鉱夫の住まいと食料を用意するにも金が…」


【はいはい。シヴァ。もうみんな、はなしについていけてないよ。つまり、おかねがないとこうざんがあってもむだってことだね】


「そう」


「…賢いから金持ちなんだな…」


「知らないってことは損するのと同じだからな。国の仕組みだって知らねぇと二重に税金を取られてたり、そんな法律なんかないのに何だかんだと手数料を付けられて多く取られてたりするし」


「……そうなのか」


「えーと、じゃ、お金持ちになるのは色々知ることが大事ってこと?」


「そう。儲け過ぎれば恨みを買うから、人間関係を上手くやって行くのも難しいんだけど」


「じゃ、お貴族様に味方になってもらえばいいの?」


「それが一番バカなマネ。貴族ってのはしょっちゅう争ってるから、権力争いで負けたら一緒に処分されるだけだぞ」


「……む、難し過ぎる…」


「だから、成功する商人が少ないんだって」


「じゃ、王族の後ろ盾なら大丈夫じゃないのか?」


「いやいや、王族こそもっと危険な王位争いに巻き込まれるっつーの。しがらみがなく、十二歳になれば簡単になれるっていう点では冒険者が一番気楽だろうけどな。死亡率が高いのもまた冒険者なワケで」


【なんだかじんせいそうだんになってきたね】


「じゃ、強い魔物を仲間にする方法は?」


「あ、それいい!守ってもらえるってことだし」


「そう上手く行かねぇよ。どっちが上か思い知らせられるのか?大半の魔物は知能がそう高くねぇから、腕づくで殺さずに敵わないと思わせてから、従魔契約を結ぶとめでたく従魔になる。テイムスキルが必要だけど、双方納得してるのならテイムスキルが生えて従魔契約が出来る。デュークのように賢いと自分で売り込んで来るけどな」


【せいかいだったし!】


「…売り込まれたのか…」


「何で売り込んだの?」


【だって、ぼく、Aランクまものだから、そうかんたんにテイムできないんだよ。シヴァならもんだいなしだとおもったし、そのとおりだった!】


「デュークは人間に育てられたグリフォンとそのグリフォンを育てた人間とに育てられたんだけど、二匹も契約出来なかったからテイムしてくれる人を探してたんだよ。デュークはまだ飛べなかった時期で、人間は行商のおじさんで戦闘力は低く、グリフォン一匹じゃ守るのも限界だったのもあるんだろうけど」


【じゅうまじゃないとまちにはいれないし、とうばつされちゃうこともあるからね】


「グリフォンを育てるってその行商人もすごくないか?」


「ああ。ちょっととぼけた人だった。グリフォンの卵を拾った人があの人である理由の一つかもしれねぇけど。デュークはそのグリフォンがどこからか拾って来た卵から生まれた」


「その辺に落ちてるのか?全然見かけないが」


「この辺にはないって。エイブル国北部地域で拾ったそうだけどな。飛べるグリフォンの行動範囲は広いから、どこから来たのかも不明」


「じゃ、バロンもどっかで拾って?」


「いや、バロンは野生で普通にテイムした。首根っこ押さえただけで降参してたけど」


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