404 手加減しねぇとミンチ
マンダルはトカゲ騎獣を借り、シヴァは人工騎馬のアオで、ナディアは従魔のトカゲ、ヨング、エイレス兄弟は二頭引きのトカゲ騎獣車だ。
護衛配置は斥候のナディアが先頭というのが定番だが、索敵能力がそう高くないので騎獣車の護衛に回し、デュークが先頭、次がシヴァ、騎獣車の横がナディア、
ナディアの戦闘力が低く、マンダルは近接専門、遠距離攻撃手段が投石ぐらいしかないため、シヴァはバロンを召喚に見せかけて、転移で呼び寄せた。
最初から連れて来なかったのは、ホテルの従業員たちと遊んでいたからである。大分、打ち解けて来ていた。
砂漠によく出る魔物と攻撃手段についてサラッと話し、軽く打ち合わせてから、出発した。
初めて行くルートだが、投影地図で方向がズレていればすぐ分かるし、何十回も通っているヨングに大ざっぱな地図を見せてもらっているので大丈夫だろう。
砂漠によく出るのは砂漠トカゲ、砂漠羊、サンドワーム、デザートキラーマンティスだ。
索敵能力が低いと砂の下のサンドワームに気付かず、突進を食らったりするが、大半の砂漠護衛はそこまでマヌケじゃない。
【ぜんぽう200mぐらい、さばくひつじのむれ、10ぴき、かな?】
「じゃ、デューク、バロン、撃退。食えるようにしろよ。逃げるのは追うな」
【わかってる~】
「がうっ!」
シヴァの指示に最後尾のマンダルは不満そうだったが、早いうちに従魔二匹の力を多少は見せておく必要があった。
デュークはマジックハンドで掴んだ槍で砂漠羊の首を斬り、バロンはそのまま砂漠羊の群れに近寄り、爪で砂漠羊の首を掻き切り難なく仕留めて行く。
四頭が逃げたが、それでいい。狩り過ぎるのもよくない。
「…強いな、二匹とも」
「手加減しねぇとミンチなぐらいな」
デュークが倒した砂漠羊を回収している時に、一行が追い付いたが、止まらず、そのまま進む。
「ナディア、右前方100m、キラーマンティス。魔法で…」
「いや、届かないって!」
「修行不足。バロン」
「がう!」
合流していたバロンが風魔法で倒した。
虫系魔物はアンデッドにはなり難いし、すぐ他の魔物に食べられるので、このままでいいだろう。魔石も素材も別にいらない。
デュークも合流して、そのまま進むが、ちょくちょく魔物が襲って来た。砂漠の南側は魔物が結構多いらしい。
従魔二匹だけじゃなく、適当に弱らせてナディアに回したり、普通にマンダルに回したりで、シヴァは補助程度で表立っては全然戦わなかった。
タープを張って日陰を作り、アウトドアテーブルセットを出して休憩した時に、その辺を指摘された。
「シヴァさんは何で戦わないの?」
ナディアに。
修行不足だと指摘したクセに、だろう。
【シヴァ、きかくがいでケタはずれすぎるから、ふたりがじしんそうしつしないように、だよ】
デュークが勝手に答えた。
「こら、決め付けんなって」
たしなめつつ、シヴァは木のカップに果実水を注ぎ、氷を入れてから配った。バロンは専用飲み皿である。
「…は?どこから氷?」
「魔法」
【いきをするようにまほうをつかうのがシヴァなんだよ。たたかってなくてもバフかけたり、よわらせたりはしてたって。シヴァがたおしたほうがはやいのに】
「補助魔法の熟練度を上げたいしな」
「今日は何か身体が動くなと思ったら補助魔法か!」
「何を今更。あまりバフを盛ると後でキツイ目に遭うんで、その程度なワケだな」
塩分補給にもなるので、茶菓子は芋チップスを出す。塩とコンソメだ。
何これ?とマンダルとナディアは最初は
「これ、何?」
「食う前に訊かねぇ?じゃがいもを薄く切って揚げた菓子。他の野菜でも美味い」
「イモなのか。食感がパリパリで美味いな。…そういや、デュークのその黒い手みたいなのって何だ?普通のグリフォンにはないだろ」
マンダルが今更も今更なことを訊いて来る。
【マジックアイテムだよ。こまかいことができてちょーべんり】
「器用さに依存するアイテムだから、誰でも使えるってワケでもねぇ。デュークはかなり器用なんだよ。たとえると、獣人じゃねぇ人間が耳を動かすようなもんだ」
「そりゃ難しいな!」
「でも、従魔用のマジックアイテムなんて聞いたことないから、人間でも使えるものなの?」
鳥の従魔にも芋チップを食べさせながら、ナディアが訊く。
「ああ。相当器用じゃねぇと難しいけど、四肢欠損してる人なら替わりになるだろうな。五体満足だと動かし方が分からねぇだろうけど、足りねぇのなら」
【あ、たしかにね】
「そういったアイテムなの。でも、ずっと魔力使うんじゃない?」
「その点も魔物の方が向いてるってワケ」
シヴァが作ったマジックハンドなので、魔力タンクを内蔵してあるし、浮遊魔力から自動供給でほとんど装着者の魔力は使わないが。
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4コマ漫画更新!
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