402 これ、下手したら国に取り上げられるぞ!

 シヴァが色んな知識を与えたため、ダンジョン内監視システムが確立している。


 なので、食品メーカードロップゲット第一号がどう反応するか、シヴァもモニターを通してマスタールームで見ていた。

 やはり、ここから、とキエンダンジョンだ。


「何これ?薄い箱?」


 パッケージはどうしようかと考えたが、今後も使える布のファスナーケースにした。取扱説明書の小冊子と料理メーカー本体が入っている。

 ファスナーが動くことにすぐ気が付いた冒険者は、じーっと開いて中身を慎重に出す。


「本?」


「魔導書、ではないな」


「り、りよ、めか?」


「料理メーカーって読むんだよ。って、どんな意味?メーカー?」


 そうか。こちらにはメーカーという言葉はなかったか。

 男三人パーティが小部屋の宝箱から料理メーカーをゲットしていた。剣士、魔法使い、槍使いの男三人パーティである。

 こういった物を調べるのはリーダーの槍使い担当のようで、小冊子を開いて読む。


「うっわ、マジか。これ、下手したら国に取り上げられるぞ!」


「って、どんな物なんだ?料理って?」


「料理が出て来るマジックアイテムだ」


 出て来る?


「…はぁっ?出て来るって何?」


「そのまま。この板みたいなのを持つと脳内にリストが浮かんで、あ、カツ丼食べたいなぁ、ってほら!出て来た。ひゃっほーっ!」


 槍使いの男は料理メーカーを膝の上に置くと、自分のマジックバッグから箸を出して、丼の蓋を取った。


「こら、待てっ!おれらには?」


「一緒のカツ丼でいい?」


「もちろん!」


 槍使いはもう二つカツ丼を出して、それぞれに渡した。


「あっつあつなんだけど…」


 半分以上食べてから、やっと不思議に思ったらしい剣士がそう呟く。


「熱々だった、だな。説明書によると最初はそこそこ食材が入っているから、リストにある物は全部作って出て来るけど、食材が足りなくなるに従い、作れない物も出て来るらしい。食材をまた入れればいいのかと思ったけど、何これ?っていうのがあるからなぁ」


 とっくに食べ終わった槍使いは、取扱説明書を読みながらそう言う。


「商業ギルドに訊いてみたらどうだ?おれらが知らないだけでどこかにあるのかもしれんし」


「そうだな。しっかし、スゲーもんが出たなぁ。内緒にしろよ?おれが最初に言った言葉、覚えてるだろ?」


「取り上げられる?…そこまですごいもの、か。じゃ、時間停止になってるってこと?」


「じゃないと腐るだろ。でもって、どんな仕組みか分からんが、今まで出たこともないアイテム。まったく噂すら聞いたことないし」


「噂があったらどこのダンジョンでドロップしたか、とうに広まってるよな。こんなすごいもの。で、食材を入れれば何でも作れるってことか?パンとかも?」


「いや、これは丼やご飯物、おかず、スープ限定らしい。麺類メーカー、クッキーメーカー、ケーキメーカー、パンメーカーと色んな種類があるってさ」


「…コンプリートしたくなるな。って、宣伝が載ってるのかよ?」


 あいにくと、一度食品メーカーをドロップした冒険者やパーティは一年以上経たないとドロップしないようになっている。偏りを防ぐための処置だ。


「おう。説明書が付いてる辺りも、ダンジョンドロップにしてはヤケに親切だよな。まぁ、ダンジョンは気まぐれなのはよく言われてるけど」


「ドロップ品の改変時期ってことかも?」


「ケーキメーカーは是非とも欲しいな」


「でも、砂糖を入れないとならないんじゃないか?たくさん食べたいのなら砂糖もたくさんだぞ」


「…砂糖を作るマジックアイテムはないのか」


「あっても材料がいるだろ。何もない所から作れるのは神様の領分だ」


「じゃ、ダンジョンは神様ではない?」


「精霊の類とは言われてるけどな。それにしても、この料理メーカー、魔力も相当使うんじゃないのか?」


「多分。補充は出来ると書いてあるが、どのぐらい必要かは基準がないからな。…あ、皿や丼はこのまま返していいのか。自動洗浄だってさ」


 槍使いが食べ終わった丼容器を集めて料理メーカーにしまった。


「そんなに簡単に使えるもの?」


「ああ。作って置いて中に入れておくってのも出来るけど、基本的には食材と食器のみでマジックバッグのような使い方は出来んらしい」


 何でもかんでも入れて容量を圧迫しそうだし、マジックバッグのような使い方をしていれば目立つので、食材と食器限定にしてみたのである。


「それって買って来たものも温かいまま保存出来るってこと?」


「そう。温め直して食べると言いつつマジックバッグにしまい、隠れて料理メーカーに移す。つまり、マズイ携帯食とはおさらばってワケだ!」


「やった!」


「バラバラになった場合の万が一の備えはいるけどな…」


「それでも、かなり大きいって!どのぐらいの容量が入るんだ?」


「えーと…あった。10m四方、大きめの宿屋ぐらいらしいぞ」


「…想像も付かないな」


「すっごい使えるマジックアイテムなのは分かった!」


「そんな認識でいいだろ」


「おれも使わせて。簡単?」


 わいわいと料理メーカーを色々試し出した。

 好評のようで何よりである。

 続いて他のダンジョンでも食品メーカーをゲットするパーティ、冒険者が次々と出て、やはり、喜んでいたが、一つのパーティは喜び過ぎた結果、奪い合いの喧嘩になったので没収した。

 遅かれ早かれ喧嘩別れするようなパーティだっただろうが、仲良く使えないのなら他に回してやった方が格段にいい。


 さて、シヴァも久々に冒険者に復帰するか。

 分身が時々納品依頼をこなしており、その記憶もあるのだが、本体は活動していないので、久々感覚なのである。


 魔力無限大検証ついでに、色々開発したり物作りをしたりしたこの一ヶ月で、かなり温かくなって来ており、日本なら桜の季節だったことだろう。まだ見付けていないが、これだけ植生が似ているのでどこかにありそうだ。

 ありそうなのは温暖気候の小国群なので、砂漠があるタクララン国から色々と行ってみよう。


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4コマ漫画更新!

https://kakuyomu.jp/users/goronyan55/news/16818093074538204303



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