396 おやつはみんなで白玉から作ったぜんざい

 昼食後は暇になったシヴァは一号も連れてホテルへ。

 鳴かない犬も変かと改造し、今が初お披露目だ。


「外見はそっくりでも、何かイディオス様じゃなさそうなんだけど…」


 魔力的に違和感を感じたのだろう。イディオスは神獣なだけに、聖なるオーラみたいなものがあるので。

 従業員たちは困惑していた。接客中の従業員以外である。


「イディオスモデルのぬいぐるみゴーレム。名前は一号。よろしく」


「わんっ!」


「ゴーレムなのに、ぬいぐるみ?」


「ぬいぐるみ。にゃーこたちは学習能力があるコアを使ってるから個性もあるんだけど、一号は犬の行動パターンを入れた普通のゴーレムのハズなのに何故か個性が芽生えてて」


「わんわんっ!」


 一号は褒められてるのが分かり、鳴きながら盛大に尻尾を振った。どうよ、みたいな感じだ。


「可愛い!撫でていい?」


「もちろん。…ああ、にゃーこたちと同じく、飲食はしねぇから食べ物は与えるなよ。あくまでゴーレムだから」


「はーい」


「ふわっふわ!」


「あ、でも、イディオス様よりはちょっと硬い」


「神獣と比べんな、神獣と」


 一号の毛皮も色々と改良してみたが、イディオスには到底及ばないのだ。


「Bさん、Aさんとデュークとバロンは?」


「まだダンジョン。スゲェ広いダンジョンに行ってるんだよ。途中で戻れねぇ所で」


「そうなんだ。こんなに長くいないと淋しいな」


「もう従業員だけで回せるだろ。まぁ、まだ勉強は色々としてもらうから、また来るようになるけどな。色々あって馬をたくさんゲットしたから乗馬や世話の仕方も」


 時間があるから馬術の初歩を教えよう、と思ったワケである。


「あ、リミトが言ってた!もう馬いるの?」


「地下の方にな。こっちにも馬場と厩舎を作るつもりだけど、位置はAとも相談なんでとりあえず、手が空いてる従業員は地下に移動だな」


 宿泊客はいるが、そう大人数ついてるのも客の息が詰まるので、食事時を除けば少人数だけだ。


 従業員たちにジャージに着替えさせると、転移魔法陣まで行くのも面倒なので、シヴァが従業員たちを連れてさくっと影転移して厩舎の前に出た。

 フォーコがちゃんと世話してくれていたので、馬たちも元気だった。


「すごい!こんなにたくさん!」


「騎士の馬だよね?これって。荷物運ぶ馬や馬車の馬より、体型がすっとしててカッコイイし」


「そう。馬車に繋ぐこともあるけどな。伝令とかでバラして使うこともあるから」


 シヴァはリミトを促して、馬の世話から教えさせた。言葉が足りない、分かり難い所は補足して行く。


 まずは本物の馬より、人工騎馬のアオから乗せさせる。

 小さい子たちは二人乗りで後ろの子が支える。まだ自分で乗れなくても、乗り方は知っておいた方がいいので。


 シヴァはせっせと鞍と鐙を作って行く。子供用で調節出来るようにするつもりだったが、体格がバラバラなので、マジックアイテムにした。乗る人のサイズに自動調整するように。


 リミト用の鞍と鐙は普通の馬具にする。革製品は馴染むと更に味が出て来て、使い易くもなるので。

 馬の手入れ用品もせっせと作って行った。


 子供は動物も好きなので、馬も好きだった。

 最低限、馬の後ろに回ると危ないことは知っていたので、注意しながら近寄っている。馬に悪気はなくても、図体でかくて重いから怪我することもある、とシヴァは更に注意を促しておいた。


 そうして、午後は従業員たちと過ごし、低年齢の子たちがお昼寝時間の前に全員地上へ戻り、おやつにした。


 そう寒い日ではなかったが、普段のおやつメニューには入れてないので、白玉ぜんざいにする。

 シヴァが錬成するのではなく、あんこ以外はみんなで白玉から作る。場所は食堂だ。全然難しくないし、多少形がいびつでもいいので。

 従業員たちはあんこには馴染みがあるので、ぜんざいも好評だった。

 接客している従業員の分は、今日の食堂担当にゃーこに預けておいた。この辺は平等に。


 おやつの後は自由時間なので、年少組はお昼寝、それ以外の従業員は一号と遊ぶことになった。

 ゴーレムなので普通の犬より運動能力は優れているので、ボールやフリスビーを取って来い競争では、全然勝てない。ハンデで一号は五秒待機してから、にしても。


 一号は防水にするついでに物理・魔法防御力は上げておいたが、戦闘能力はほとんどない。牙も爪も形だけで強度も力もないので、多少攻撃力があるのは体当たりぐらいだ。


 しばらく遊んでいるうちに日が暮れ、客も本館に帰って来たので、従業員たちも従業員寮に帰った。

 今までついていた従業員と交替して客の夕食の配膳を手伝う従業員もいるが、一斉に風呂に入ると洗い場が混み合うので入浴順番もあるのである。

 譲り合いも大事かと、当初から人数分の洗い場を作らなかったし、従業員も増えたワケだ。


 シヴァと一号は一緒に風呂は入ったが、夕食はアカネと食べようとフォボスダンジョンの最終フロア、10階に影転移した。


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新作☆「めがーね?MEガーね?メがーNE?」

https://kakuyomu.jp/works/16818093074417686883/episodes/16818093074417749783


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