363 しんたいきょうかはなんにもいわない
シヴァは柔らかめの土人形を作って、ふんわりとした風ボールが出て来るミニペン型魔術具(約10cm)で土人形を狙い連射する。
ぽこぽこ軽く跡が付く程度だ。
【ぼくやりたい~】
「はいよ」
面白そうだと思ったデュークがマジックハンドの手を挙げたので、シヴァはミニペン型魔術具杖を放ってやった。
デュークはシヴァがやったように、魔術具で土人形を狙い連射する。
「かなり威力を落としてある。知っての通り、魔術具は術式を埋め込んで設定してあるから、誰が使っても同じ効果で連射が簡単。後は狙いを付けるだけ」
もう一体、柔らかめの土人形を作って、シヴァは魔法で魔術具ぐらいの強さのふんわり風ボールを作り出し、連射すると、どんどん土人形が削れて行った。
「あ、ちょっと強いか。慣れてる魔法使いなら魔法でも連発は出来るが、威力を弱くする方の調整は難しい。威力を強めるには魔力を多く込め、相手に耐性がない、弱点になる属性で攻撃すればいい。その点、魔術具は属性も決められてるし、威力も固定。多く魔力を注いだら壊れるから気を付けるように。…はい、立って。じゃ、魔法と魔術の違いの確認をした所で、魔法の実践をしてみようか」
土人形とベンチを消すと、訓練場の端にずらっと土人形を並べてやった。硬さはまぁまぁ硬いぐらいで。
「じゃ、デュークとバロン、見本。土人形の一体、それぞれウインドボールで破壊しろ」
【りょうかい!】
「がう!」
出番!とばかりに即座に応え、デュークもバロンもウインドボールで土人形を破壊したが、どちらもちょっと威力が強く、爆発したかのように土人形が飛び散り跡形もない。
ターゲットの手前で発動させるやり方ではなく、魔法を使う人から見えない風のボールが出る感じだったのはいいのだが。
「簡単に破壊したけど、この土人形、ロックゴーレムぐらいの強度を持たせてある。頑張って壊してみてくれ。適性のある属性魔法で何回攻撃してもいいから。当然、的の土人形の側に近寄らず、危ないから射線にも入らねぇようにな」
シヴァは一応注意をしておいた。
単に的を狙うだけより、人形の方がやりガイがあるらしく、生徒たち…見学者たちも張り切って魔法を飛ばし始めた。
魔法のどれかに適性がある生徒たちばかりだが、適性値が高い属性より自分の好みの属性魔法を使ってる生徒もいる。まぁ、好き好きだ。
【ぼくたちもしどうするの?】
「とりあえず、見学。無詠唱での魔法発動は難しいみたいだし。まず身体強化を教えるべきかも」
【あ、そうだね。えいしょうしてるまほうつかいだって、しんたいきょうかはなんにもいわないではつどうしてるよね】
「それを他の魔法で応用出来ねぇのがよく分からねぇんだけどな」
個別に指導して回った後は、魔力操作から教えることにして、体内で魔力を循環させる。
そして、足に多く魔力を集めると筋肉が強化され、走るのが速くなったり、ジャンプ力が上がったりする。それが身体強化だ。
全身に魔力を纏わせないと、筋肉や神経を痛めるので指導者の指導の下、覚えた方がいい魔法である。
身体能力を高めるポーションや薬はあっても、魔術ではそういった強化系はない。各個人で違い過ぎるからだ。
「はい、デュークとバロン。見本。身体強化かけて土人形一体をぶっ飛ばせ」
デュークとバロンは前足の一振りだけで土人形をぶっ飛ばした。粉々に。ちゃんと結界を張っておいてよかった。そうじゃなければ、破片で怪我人が出たかもしれない。
「バロン、上に高くジャンプ!」
ついでに、バロンの運動能力披露してみた。5mぐらい平気で跳び、着地もくるりとにゃんぱらり、で優雅だ。
「…先生。魔物だからこんなにすごいんじゃないんですか?」
【なにいってんの!シヴァがいちばんすごいって!】
「えー見せんの?…はいはい」
シヴァはひょいっと軽く5mまで跳んでやった。
身体強化なしでかなーりセーブして。着地は普通に降りるが、低い所から降りた程度の膝の曲げ具合で土が掘れたりもしないし、どこも痛まない。
生徒たちも見学者たちも、揃って口を開けっ放しだった。
「口閉じねぇと砂埃が入るぞ」
パンッパンッ!とシヴァは手を叩いて我に返らせてやった。
生徒たちは魔力が少ないので、実践はその辺までにし、後は時間まで土魔法で障害物を作っての鬼ごっこをすることにした。
シヴァ、デューク、バロン以外が鬼で。
シヴァはかなりレベルを落とし、多重魔法でデバフもかけたのだが、もちろん、捕まるワケがなかった。
生徒たちは体力作りから始めた方がよかった。
――――――――――――――――――――――――――――――
新作☆「番外編42 ホラーから始まる青天の霹靂」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093073399260607
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます