105 仮設住宅はあくまで仮設!
分身たちは役人とどこなら仮設住宅を作っていいのか話し合い、氾濫した川からは…つまり、元住んでいた所からは少し遠くなるが、高台のこの辺りの空き地なら、と許可をもらい、建設に取り掛かっていた。
まずは長雨で緩んだ地盤の整備と補強。排水パイプを埋める。
てっとり早い家と言えば、土魔法製である。
結界で支えるので、柱はいらず、中が広く使える。
5階建てで1フロアに部屋は10室。両端に男女分かれた共用トイレと洗面所とシャワー室がニヶ所ずつ。階段は真ん中だ。
男女で分けた場合、家族がバラバラになってしまうので、こういった仕様にした。
部屋はワンルームだが、畳のようなものが敷いてある和室もどきで、靴を脱いで上がるようになっており、寝具の増減で人数調整が可能だ。ベッドを作るより、こちらの方が作るのが速いし、この方がくつろげるだろうという配慮である。現代知識も生きてるワケだ。
トイレとシャワー室以外は扉は付けてないが、その辺は各自で工夫して欲しい。五十枚も扉を作るなら、仮設住宅のもう1フロアぐらいは作れるので。
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ここは“仮設”住宅。半年経ったら取り壊す。
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そう看板に書き、仮設住宅の壁に取り付けておいた。
だから、各部屋にキッチンや流しは作らなかったし、窓もアクリル窓のはめ殺し。長期で住むような設備ではなかった。
もう明後日には十月だ。
集合住宅だと人は多いし、建物内の熱量も上がる。
換気口は多めに作ってあるが、空調は設置していないので、冬場は暖房の魔道具を持ち込めばいいが、窓を開けられない夏場は建物内に熱がこもってしまうだろう。
本当にあくまで仮設住宅なのである。
仮設集合住宅の隣に共同の炊事場と食堂の建物を設置した。
排水設備はパイプを埋め、ろ過装置を途中に設置し、キレイになった水が川へ流れるようになっている。
トイレの汚水処理はいらない。
シヴァには原理がよく分からないコアたちの超技術で処理しているので、排水を考えなくていいのだ。
普通の排水の方も同じように出来るのだが、内緒にしたいので不自然のないようにしたのだ。排水は調べても汚水までは普通調べないので。
どの家族が何階のどの部屋に、と決めたり、案内したり、というのは行政の仕事なのでお任せ。
元病人、元怪我人たちの移動が始まったので、手伝おうとしたら、大半の人たちに神に祈る時のように、両手を組んで頭を下げ、
分身たちも全員だ。
認識阻害仮面は個人によってバラバラに見えるようだが、一体、どう見えてるのやら。
家がなくなった、住めなくなった人たちも仮設集合住宅に移動させた後は、炊き出し料理を追加し、それぞれ交替で配るよう指示。
監督と補充はアカネとコアバタ数体に任せる。
シヴァたちは氾濫した川の後始末を始めた。
まず、シヴァと分身たちの空間収納にたっぷりと川の水を収納して減らし、川べりの水分を抜きながら土で固め、川をもっと深く幅も広くして掘り出した土と石や岩で堤防を作る。
いくら、大雨だったとしても川の整備が全然やってなかった。
このぐらいやれば、また大雨が降ったとしても氾濫にはならない。
川全部はやらず、あくまで氾濫した所の周辺の応急処置だけだ。
後は行政でやれ、である。
家が流されたせいで木々やゴミで川が詰まり、またどこかで氾濫が起こるとマズイので、川のゴミ掃除はしてやった。収納するだけである。木々は乾かせば薪ぐらいには使えるので、後で錬成しよう。金物は溶かして調理器具に。
川の周辺掃除が終わったら、今度は落ちた橋をかけ直し、続いて土砂崩れで埋まった道を掘り返す。二度と埋まらないよう崖側を安定良く削って固めておく。抜けた木々はもらった。
それから、水はけの悪い所や、土地の低い所に溜まってしまった水を収納して行く。床上浸水した家の片付けは家人じゃないと、何が必要なのか分からないので手を付けない。
これでとりあえずは大丈夫だろうが、被害はこの周辺だけではない。
移動する前に回収した水を水魔法でろ過し浄化もして、樽に詰めた水樽をたっぷりと増やしておいた。木樽も再利用である。大雨で浸水してしまった井戸水は濁ってしばらく使えない。
ろ過ぐらい出来る魔法使いや錬金術師はいるだろうし、水が出る魔道具もあるだろうが、平民にはいまだに井戸がメインなのだ。それはサファリス国でも変わらない。
「貴様ら勝手に何やって…」
時々文句を付けて来る貴族や権力がある商人っぽい人が出るが、相手にするのも面倒なので、問答無用で全員、影収納に沈めていた。
災害の時は行方不明者は少なからず出るものなのだ。
覚えていたら、後で警備隊の牢にでも放り込んで来るか。
さて、暗くなるまでそう時間もない。次の場所へ移動しよう。
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