128 金がない時の報奨は地位や名誉が定番だが…
イディオスは二日目の夕方に帰り、宰相は被災地に来た三日目に王都へ戻った。
通常業務も滞り過ぎると復興支援もままならないし、王都でしか手配出来ないものもあったので。
送迎は黒虎ヴェスカにやらせたかった所だが、あいにくと行ったことのある所へしか転移が出来ないので、シヴァが騎竜でヴェスカも連れて王都に行き、宰相の手足として使わせることにした。
空を飛んだおかげで、転移ポイントを街ごとに置けたワケだ。シヴァも全部は置いてないので、ついでに。
ヴェスカと直で連絡が出来ないのも不便だろう、と通信魔道具を「偶然手に入れた物があるから」と渡してやった。
ヴェスカには伸縮自在の首輪型、宰相にはバングル型で。
ついでに国王にもバングル型の通信魔道具を渡し、三者合同でも話せるようにした。
もちろん、都合よく首輪型まであるワケがなく、実際には作っている。
当然、シヴァには繋げない。いいように呼び出されるのが目に見えてるので。
通信の魔道具は国家でも持ってるワケだが、距離が短いものしかなく、各街を中継して、というまどろっこしいものだったのだ。しかも、魔石をガンガン使うタイプでやたらと使えない。
その点、シヴァが作った物は浮遊魔力利用型で、国を二つ以上またぐ程の長距離じゃなければ、追加魔力はいらず、念話通話も可能で雑音もないクリア音だ。
これだけでも一財産なので、更に王家にツケが溜まった。
シヴァはガンガン魔力を使い、仮設住宅や大衆浴場を作った後なので今更も今更なのだが、魔道具作りはやはりジャンルが違うし、伏せておきたいので。
分身アルを出せばいいのかもしれないが、これだけのためには魔力がもったいなかった。
国王たちも「偶然」なんて信じていないだろうが、伏せておきたいのは伝わっていればそれでいい。
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ラーヤナ国、エイブル国の救援隊は被災地に来て五日目、シヴァたちは六日目になる午前中で引き上げた。
国内の復興支援団が続々と集まって来ていたし、後は一般人でも何とかなる所まで復興支援したので。作物は少しだけ成長を早くしてあるし、川にも魚が戻り始めたので、食糧不足にはなるまい。
それに、ティサーフダンジョンの浅層を食材フロアに変えたし、ティーコにも様子を見てもらうので、何かあれば駆け付けられることもあった。
国王と王族、貴族や王宮に勤めていた人たちは、そのまま被災地にて復興活動である。
被災地たるセプルーの街近辺から王都までダイレクトに転移は出来ないものの、二、三の街までは飛べる転移が使える黒虎ヴェスカがいるので、王都に早く帰ろうと思えば帰れるのだ。
数人ずつ、魔力が回復するまで時間を置くことにはなるが、馬車なんかとは比べ物にならないぐらい早く。もちろん、輸送にも使える。
いいようにヴェスカを使っているのだが、災害で獲物が中々いない状況、しかも、神罰でサファリス国からは出れない、では、働いて人間に食わしてもらうしかなかった。
本当の大きさは4mもある図体の割には、二人前ぐらいで済む効率のよさだ。その辺りは神だか超越者だかも気を使ったのかもしれない。
しかし、そんなメリットを帳消しにするかのように、空気が読めない発言をするので、イビツにバランスが取れているのだろう。
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久々にキエンダンジョンの温泉宿風自宅屋敷へ帰ったシヴァとアカネは、まずは温泉を堪能した。
温泉の公衆浴場を作っても混雑していたので、シヴァは作った後の一回しか結局入れなかった。
女湯の方は女自体が少ないので、快適だったようだが。
結局、男湯は広げた。
これで温泉宿を作れば、温泉を売りにして観光地化してもいいぐらいの設備だ。
適正な利用料を払えば、商用利用しても構わない旨は伝えてある。
土地はサファリス国のものだが、掘削して温泉を掘り当てたのも、建物も設備も建築も備品に至るまで、全部シヴァから出ているし、高台で利用していなかった土地なので土地代はたかが知れているし、シヴァたちが提供した大量の食料や物資や有能な人手、他国の救援隊の要請・送迎、温泉も仮設住宅も無償提供…等々を考えれば……。
シヴァたちが作った、建てた物はその土地も含めて全部シヴァ名義にするのは既に決定事項だった。
本書類は後回しになるので、簡単な仮契約は既に交わしてある。
シヴァたちが作ったもので寄付という形になるのは、井戸、打ち込み井戸のポンプ、畑や農具といった、今後の生活に必要なものになる。
金がない時の報奨は地位や名誉が定番だが、それでは返って失礼に、とでも思ったらしく、国王たちは言い出さなかった。
賢明である。
そもそも、あれだけの力と財力を見せ付けたので、シヴァがその気ならとうにどこかの国で幹部になってるし、一国の王にも、いくつもの国を征服して皇帝にもなっている、というのも分かったのだろう。
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