117 ……よく倒れんな
「ゼロ。お疲れだろ。休憩がてらカーマインと一緒に温泉に入って来たら?完成したし」
すぐ、分身が声をかけて来る。
「いいな、それ」
『おお、温泉!是非とも。…お主もシヴァでは?』
神獣には認識阻害仮面はまったく効いてないらしい。ステータス隠蔽は効いてるようだが。
『分身八人作ってるんだよ。本体の呼び名がゼロ。で、オーブで魔力補給してるワケで。アルに化けさせたのもいるから』
『……よく倒れんな』
『コアたちの協力があればこそ、だ』
【大地の杖】を分身に渡して使ってもらう。休憩中の本体にはいらない。
出来立ての公衆浴場は、最初に作ったデルティーンの街の公衆浴場と構造はほぼ同じだったが、もうちょっと湯船が広く、シャワーの数も多い。
「足湯も作るといいかもな」
『足湯?足だけ湯に浸けるということか?』
「そう。それだけでも温まるし、一種の社交場にもなるワケだ。おれが住んでた異世界の温泉地だと結構普通の施設でな」
『ほう?儲かるのか?』
「商売にはしねぇよ。商売してる所も確かにあったけどさ。源泉かけ流しだから、掃除ぐらいの手間しかかからねぇし、それもこっちだとクリーンでいい。ま、この公衆浴場は国営で税金で運営しています、って感じになるだろうけど」
『しかし、それでは手柄は全部国に行くのではないか?』
「それでいいんだって。個人が目立ち過ぎるといいことはまったくねぇし、国に貸しを作ることにもなるしな。どうやら、おれは寿命が長いようだから、ゆっくり取り立てるさ」
『やはり、とうに人間の域を逸脱しておるのか。滅多におらんのだが、異世界人も滅多におらんのだから、どうなのかのぉ?』
そういえば、カーマインとはシヴァの寿命について話したことはなかったか。イディオスとはあっても。
「そうじゃなくても、不老不死や若返りの霊薬を持ってるんだけどさ。これ以上どうしろと?な。…あー水竜も鑑定してねぇけど、そんな効果があるかも。下位種でも竜だしな」
『血で万能薬が作れる程度じゃないのか?』
「程度じゃねぇぞ。人間にとっては。討伐した証拠になる頭以外はキーコに解体してもらうかな。アカネが仕留めた獲物だから了解取ってから」
通信バングルで訊いてみた所、アカネもすっかり忘れてて、好きにしていいとのことだった。シヴァはキーコに連絡を取って、すぐマジックバッグに入れて転送しておいた。
キーコによると下位水竜とはいえドラゴンなので、肉は美味しいらしい。非常に迷惑を被った被災者たちで食べるべきだろう。
肉は適当なブロックに切ってもらい、転送で送ってもらった。
血の効能もカーマインが言った通り、エリクサーの素材になり、武器強化も出来るらしい。鱗や爪は武器強化オンリー。角は杖か魔力タンクに。
水竜の眼球は状態がいいので、アカネが持ってる【ドラゴンアイ】と同じ物が作れるらしい。
シヴァに一つは確定として、眼球は六つ。
討伐証明として一つの頭は残すので、後三つ。まぁ、分身に使わせることもあるか。キーコに作っておいてもらう。
温泉を楽しんだ後は、ドームハウスを出し、その中でカーマインとお茶した。本当に助かったので大サービスで色々楽しめるパフェを出してやる。縦長容器ではなく、ガラスのサラダボウルに、だが、そうじゃないとクチバシでは食べ難いのでしょうがない。
喜んでるのだからいいのだ。
シヴァのお茶菓子はアカネの作ったパウンドケーキ。
プレーンのシンプルなものだが、コーヒーにとても合うし、最高に美味しい!
羨ましがったカーマインにも分けたが。人が食べてる物の方が美味しそうに見えるのは、神獣も同じらしい。
『シヴァは、この後、昼寝でもするのか?』
「いや、まだまだ働くって。魔力はまぁまぁ回復して来てるし」
『分身を八人も出した上、かなり魔力を使ってるんだから、無理せずちゃんと休めよ。自然回復じゃないのなら、やはり身体に負担はかかるのだから』
身体を車で例えるなら、魔力の自然回復が法定速度で、他から魔力を補給するのはスピード違反、車=身体自体にリスクがある、ということだ。他に例えるなら、ドーピングである。
それはキーコたちからも注意されているので、シヴァもよく分かっている。
「分かってるって。おれが無理しねぇようアカネもたびたび確認に来るしな」
『それは元々信用がないという証拠ではないか』
「あはははは。非常時だからしょうがねぇし。ま、だいたい出来たから、後はゆっくりやるさ」
『じゃあ、何故、ドームハウスを出すのだ?他の者に見られんような配慮なら、天幕でも何でもいいだろうに。シヴァに自覚はなくても、身体が休みたがっているのではないか?』
「ゆっくり寛ぎたかったのはあるだろうな。ドームハウスなら外から見えねぇし、防音だし」
『中々居心地はいいの。変わった内装で馴染みはないのに』
「これもある意味人類の
【シヴァ、今どこ?】
そこに、アカネから通信が入った。
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