113 実物の方が恐ろしいです
「な、何百人でも一瞬で連れて行ける、と?」
「正確には影転移はおれ一人だけ。後は眠らせて影収納に入れて連れて行く。生き物が入るのが影収納なんだが、その名の通り、中は真っ暗で不安に思う人もいるだろうからな。問答無用で連れて行くつもりだったが、割と話が分かりそうだから説明している。問答無用を提案したのは妻だが、それ程、時間がないということだ」
国王はジッとシヴァの目を見つめて、すぐに頷いた。
そういえば、認識阻害の仮面を着けてなかった。まぁ、現地に戻ったら、でいいか。
「……分かった。人を集めよう」
「ちょっとお待ち下さい、陛下。…疑うようで申し訳ないが、念のためギルドカードをお見せ頂けますかな?」
宰相としては確認せねば、と思ったらしい。
はい、とシヴァが黒いギルドカードを渡すと、「やっぱり、本物」と宰相は震える手で返して来た。鑑定持ちらしい。
「噂程、怖い男じゃないだろう?」
「実物の方が恐ろしいです…。こんなに大きな借りを作ってしまい、また更に力を貸して頂けないのなら滅ぶしかないのですから」
「重く受け止め過ぎだ。睡眠不足のせいで思考が暗い。
…ああ、ちなみに、ラーヤナ国からは今日、復興支援隊が派遣される。ツテを辿って要請しておいた。エイブル国も支援隊は派遣出来るだろうが、支援物資の方が先に到着するだろう。そして、『こおりやさん』『カップらーめんやさん』は知ってるか?『にゃーこや』という屋号にしたそうだが、そこの店長も支援に駆け付ける予定だ。友達の友達の友達、といった関係でな」
シヴァの友達神獣イディオス→アル、だと近過ぎるかな、ともう一人挟んでみた。
「…それは単なる他人では。知り合いより遠いですな…」
「…って、本当か?もう各国に支援の約束を取り付けていると?」
「約束ではなく、確実な予定。ラーヤナ国の支援隊は今日到着予定だ。店長が連れて来る。あいつも影収納が使えて影転移も使えるから、助力を願ったワケだ。友達を通じて。ちなみに、その友達も一緒に来る。フェンリルの神獣様だ。魔法がかなり使えるし、浄化も出来るし、あのふわふわもこもこの毛皮が民たちを和ませるだろう」
「…し、神獣様だと…」
「フェニックスの神獣とも友達だが、役目があるから短時間だけだな。ジメジメした土地を乾かしてくれるだけでもかなり助かる」
眷属を呼び寄せて任せてから、になるので、カーマインの到着は午後になる。
カーマインは時間の都合が付き次第、転移魔法陣経由で勝手に来るので、ティサーフダンジョンに到着したら、引き寄せるだけでいい。魔法陣の登録は、キーコバタやティーコバタがやってくれる。
「シヴァ殿は神の使徒様、なのですか?」
「まさか。神獣たちとは単に友達なだけだ」
「……た、単に?」
「エイブル国アリョーシャの街なら、神獣と友達な人間は結構多いぞ。宴会で仲良くなってて。神獣様、ノリがいいからな。…で、国王。おれは貴殿の依頼で動いていたことにするから、口裏合わせとけよ。さぁ、さっさと準備しろ。三十分後に移動する。場所はどこでもいいが、人数が集まれる所は?」
「では、噴水のある大きい広場に。夜会をやる時にたくさんの馬車が停まる所です。シヴァ殿、拡声魔法が使えるのでしたら、頼めますか?宮廷内にわたしの声を届けて欲しい」
「いいだろう。普通に話せ」
宰相の依頼をシヴァは気軽に請け負った。
【おはようございます。宰相のバーリー・フォン・ビスマールです。今から三十分後、南西部のセプルーの街方面の復興支援に陛下と共に参ります。皆さんも動ける格好で着替えだけ持ち、すみやかに噴水前広場にお集まり下さい。
国家存亡の危機です。非常事態です。通常業務なんて停止でよろしい。
いいですか。大きな穀倉地帯が大雨災害で大打撃を
幸い、SSランク冒険者のシヴァ殿の助力が得られました。何百人でも一瞬で現地に運んで下さるそうです。ラーヤナ国、エイブル国からも救援隊が派遣されることになっています。
サファリス国の民であるあなた方が率先して動かなくてどうしますか。明日は我が身です。大雨の原因はカウラナ王国から流れて来た水竜三匹の
その水竜は討伐されていますのでひとまず安心ですが、ずっと安心というワケではありません】
宰相をやってるだけにビスマールは頭の回転が早いのだろう。事情を伝えると共に、喝入れもして話を進めた。
【また、自動販売魔道具という画期的な大発明をした『こおりやさん』『カップらーめんやさん』の店長さんも救援に駆け付けて下さる、とのこと。上手く行けば、我が国にも設置して下さるかもしれません。
しかし、それも被災地の復興次第です。シヴァ殿のご厚意により、食事も宿舎も用意して下さるそうです。皆さん、心置きなく働きましょう!集合場所は噴水前です。さぁ、準備して集まって下さい!】
宰相の演説が終わると、宰相も国王も準備に走り出した。
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