071 ボールを咥えて持って来る一号
シヴァは影の中で王宮に設置するからくり時計の設計と置き時計のからくり時計をいくつか作っていた。
デザインやアイディアはコアたちからももらっており、それぞれのコアも色んなからくり時計を作ってみることになっている。
置き時計の方はフロアボスのドロップ品になる予定だが、その前にどんな物を作ったのか発表するのだ。各自の個性が現れることだろう。
この後、Cランク昇格試験組は大した動きはなさそうなので、パーコに何かあったら連絡をくれるよう頼んでから、シヴァはキエンダンジョンの自宅へ転移した。
大きい柱時計を作るには、正確な寸法を計って来ないとならないが、その前に夕食だ。一号やにゃーこたちも淋しがることもあって。
今日はオークキングとんかつ。
ロースとヒレ、味噌ダレわさびダレソース、と揃い踏みで定番千切りキャベツのサラダも添える。ご飯とわかめの味噌汁、というとんかつ定食風だ。
夕食後、シヴァは隠蔽をかけてさっさと王都エレナーダの王宮に転移し、謁見の間の玉座の背後の壁を採寸する。
この壁とその前のスペースは国旗を飾ったり、花を飾ったり、儀式や褒美に必要な物を置いたりしているので、柱時計を設置するのにもちょうどいいのだ。天井から床までぴったりくっつけた形にするので、強盗には難易度が更に高い。
ついでに、国王に一応許可を取ろうかと思ったが、ダメと言われても設置するので意味ないか、とシヴァは採寸が終わったらすぐ帰った。
どう反応するのか、試金石のためにも置くので。
床と壁との固定は現地でやるが、それ以外は作ってしまって構わない。
謁見の間で謁見している時、何かの儀式の時に時間になって作動してしまうのも問題があるので、からくりを止めるリモコンを渡し、時間じゃなくてもからくりを動かせられるのは製作者側だけにした。
ヘタに自由に見れるようにすると、新鮮さが薄れるし、これでまた揉めごとになりそうだし、からくりが動く時間を待っている人たち、というのが風情があるので。
からくりが動くのは一日三回だ。浮遊魔力を溜めて動かすので、魔石の交換はいらない。
製作者側だけ、どのからくりでもいつでも動かせられるのは、魔力補充が出来るからでもあった。
あくまで「からくり時計」なので出来る限り、魔法に頼らず、歯車や磁石や空気ポンプ、ピタゴラ的な動きをメインに。
コアバタたちと一緒にシヴァが柱時計を作っていると、いつまで経っても遊んでくれないから焦れたらしく、一号がシヴァの背中に軽く頭突きして来た。
一号はぬいぐるみゴーレムなので、鳴く機能は付けてないが、こういったことはする。
「はいはい、ちょっと待て」
【マスター、一号と遊んであげては?今日中に作り上げないとならない、というワケではありませんし】
ゴーレム化したキーコも可愛がってるだけに一号に甘い。
「そうなんだけど、キリのいい所まで」
キーコの言葉にシヴァが答えてる間に、一号は自分のおもちゃ箱からボールを咥えて持って来てちょこん、と横に座った。投げろ、だ。
リアルに作り過ぎたせいか、犬の基本行動を入れてるせいか、どうも自我が芽生えてるせいか、つぶらな瞳に感情を映すようになった気がする。
くっ、可愛い。
「分かった、分かった。遊ぼうな」
シヴァは元は犬派で、就職して生活に余裕が出来たら犬を飼う予定だった。
…まぁ、余裕が全然出来ないうちに異世界転移になってしまったのだが、アカネも一号を可愛がっているので結果オーライか。
にゃーこたちのおかげで猫派にもなりつつあるが、多機能で優秀なゴーレムなので一緒にしてはダメな気もしなくもない。
海辺の砂浜にライトを他数浮かべて明るくしてから、シヴァは一号とにゃーこたちとたっぷり遊んだ。
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