067 近寄るまでわざわざ待って全員を危険にさらしてから?
アカネが歩き出すと、同じ前衛の剣士のシュタインが続き、フィヨルドも、さっさと続いてダンジョンへ入る。
すぐに転移魔法陣で10階に行き、そこから階段を下りて11階だ。
鉱山が続くフィールドフロアで、足場は悪い。
鉱山にいくつかある坑道に潜ったり、外に出たりで、知らないと迷うようになっているが、11階は冒険者がよく来るため、足跡がたくさんある所が本ルートだ。
下層に行く程、痕跡は消されて行くので地図を持ってるか、地図系探知系のスキル魔法を持ってないと迷うワケで。
「フィヨルドさん、本ルートでいいの?」
「ああ。地図があるから見てくれて…」
「分かるからいらない」
「宝箱がある小部屋や通路を発見した場合はどうする?」
魔法使いのオロゾがそう訊いた。
「寄って行く。暗くなる前に14階に到達出来ればいいから、ペースはそう速くなくていい。昼も泊まる場所もセーフティスペースか階段で」
「分かった」
「了解。…上空約200m先、クラッシュコンドルが3匹が接近中。撃墜してもいい?」
肉ドロップが美味しいので、アカネがそう訊いた。
普通の視力なら点にしか見えないが、高ステータスのアカネにはハッキリ見えている。
「に、200m先が見えるのか?射程もそんなに長く…?まぁ、好きにやれ」
フィヨルドの許可が出たので、アカネは魔道具拳銃で撃ち落とした。
普通の拳銃の射程距離は最大でも50m程度だが、魔道具拳銃なら三倍、射程距離の長い風魔法付与の特殊弾なら300mは行ける。
遠距離だとさすがに威力が落ちるので、アカネは二発ずつで仕留めていた。ドロップを風魔法で引き寄せて手元に。
ドロップは羽もあるのだが、幸運Aのアカネは希望通り三つとも肉ドロップだ。【チェンジ】でしまう。
「あ、今のでもドロップ分けるの?」
「いや、魔法は…」
「おれじゃない。無詠唱では使えんし、距離が遠過ぎる」
「うん、全部わたし」
「なら、アカネさんのものでいいが、もうちょっとパーティでの戦い方を意識してくれ」
「近寄るまでわざわざ待って全員を危険にさらしてから、ようやく攻撃するってこと?クラッシュコンドル、風魔法使うんだけど」
「う、そう言われると…」
「なるべく、こっちにも回してくれ、でいいだろ。アカネさんが突出しているのは確かだし」
「色々訊きたくもあるが、後回しだな。おれの魔法の射程は100m程度だから、ああいった時は頼む。バフやデバブも使えるから、かけて欲しい時は言ってくれ」
「わたしも疲労回復ヒールやバフも少し出来るから、気軽にどうぞ」
シュタイン、オロゾ、ラバーヌはアカネに好意的だった。打算があるのかもしれないが。
「ありがとう」
その程度のやり取りだけで先に進むことになり、アカネは出過ぎないよう気を付けていた。
しかし、本来アカネ一人で余裕な所に七人は多過ぎた。回復術師でも短剣ぐらいは扱えるラバーヌだが、ゴーレムやロック系魔物には刃が立たず、誰も怪我しないのでほぼ歩いているだけである。
休憩を入れた時に、ラバーヌが意見する。
「フィヨルドさん、二手に分かれた方がいいんじゃない?わたし、暇過ぎるんだけど」
「そう言っていられるのも今のうちだけだぞ。団体で出て来るようになるから」
フィヨルドがそう答えると、
「この階層の魔物じゃ、大して連携取れてないから平気だろ」
とカラバッサがそんなことを言った。
「二人ずつペアで交替で戦うことにしてはどうだろう?ラバーヌさんは回復役だから外れて残りの六人で」
オロゾがそう提案し、
「ああ、賛成だ。どうせ、パーティバランスは悪いし、個々の実力を見るにもいい」
とシュタインが真っ先に賛成し、
「おれも賛成」
とガジャルも頷き、
「それなら、わたしは一人で十分だから、フィヨルドさんは試験監督してて」
とアカネが修正した。
「そうは言うけど、臨時パーティでどれだけ動けるのか、という所も見る試験なんだぞ」
「それはもっと下層でいいじゃない。フィヨルドさんの指示が遅いせいもあって、連携が取れないのもあるんだし。その時は一番察知が早いアカネさんにリーダーをやらせた方がいいと思う」
ずけずけとラバーヌが言うが、鋭い指摘だった。
アカネがちゃんと教えてもフィヨルドの指示が遅いのだ。ラバーヌは普段から後衛で他の人たちの動きをよく見るクセが付いてるのもあるのだろう。
「あー分かった分かった。やってみろ」
投げやりだったが、許可は出たので、まずはペアを決めた。
荒っぽい槍使いのカラバッサはフォローが出来る魔法使いのオロゾと。剣士のシュタインはもう一人の槍使いガジャルと組んだ。
この順番で最後にアカネ一人。
戦ってる人たちが危ない時は待機メンバーが手を出す、ということで。もちろん、自衛もする。
交替は魔物一グループを倒したら。場合によっては次から次へと連戦になるが、そういった時は仕方ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます