004 かき氷や冷水の自販なのに強盗?

 休憩を終えて、再び倒しながら進み、2階へ。

 四耳ラビット、アークフロッグといった魔物が出て来て、肉や香辛料をドロップする。食材狙いならここからが本番だ。


 シヴァはアカネに一応アクティブ結界を張ってから、魔物パックを作ってアカネの所へ持って行き、一面だけを解除して魔法で攻撃させた。殺傷力が高いのは属性効果もプラスされる火魔法だが、まだアカネの魔法レベルが低いので、何度か撃たないと倒せない。


 アカネも無詠唱で魔法が使えて発動も速いから、後は慣れと狙いの問題だろう。標的の側でファイヤーボールやウインドカッター、というやり方もすぐに出来ていた。ゲームで馴染みがあると覚えも早いのだろう。魔法はイメージなのだから。


 アカネは次第に影収納も器用に使いこなすようになった。

 ドロップは床に落ちるので、その影から影収納へ、ということだ。

 …その手があったか。シヴァは影魔法を覚えたのが結構遅めで、空間魔法ばかりを使っていたため、思い付かなかった。

 影収納の場合でも空間収納と同じく、脳内にリスト化されるので分かり易いが、時間停止ではないので、貯まったのを見計らってマジックバッグに移す。

 魔力が回復するまでアカネはショートソードも使っていたので、剣術スキルも生えた。

 アカネがレベル20になった所で、今日はここまでにした。


【転移者・異世界から転移して来た者。経験値倍加、スキル、魔法の覚えがよくなり、イメージ力次第で出来ることも多くなる】


 この称号と経験値増加のイディオスとカーマインの加護のおかげでレベルが上がるのも、スキルが生えるのも早い。命中スキルはまだ生えてないが、もうちょっと遠距離じゃないと難しいかもしれない。


 コアルームに寄ってアーコにアカネを紹介してから、キエンダンジョンの自宅に帰った。

 風呂に入って夜食を食べて、シヴァにとっては久々に…昨夜に引き続き夫婦水入らずで「おやすみ」と口づけを交わして寝る幸せを味わうことが出来た。

 ……まぁ、フェンリルぬいぐるみゴーレムの一号もいたが。


――――――――――――――――――――――――――――――

名前:アカネ(茜)

年齢:23歳

状態:良好

職業:冒険者(Fランク)

Level:20

HP:300/300

MP:150/150

攻撃力:B

防御力:D

魔法防御力:C

素早さ:B

器用さ:S

知力:S

幸運:A

スキル:多言語理解、射撃、剣術、鑑定、錬金術、速読術、魔力自動回復、浮遊魔力利用

魔法:生活魔法、属性魔法(火・水・風・土・雷・氷)、身体強化、結界魔法、付与魔法、探知魔法、重力魔法、回復魔法、飛行魔法、影魔法(影転移、影拘束、影収納、影分身)、ボイスチェンジャー、変幻自在、隠蔽魔法、チェンジ、スリープ、パラライズ

称号:転移者、シヴァの愛妻、フェンリルの加護、フェニックスの加護

――――――――――――――――――――――――――――――


【フェンリルの加護・経験値増加、幸運+10、風属性耐性も与えられる】


【フェニックスの加護・経験値増加、防御力+10、火属性耐性も与えられる】


 射撃と剣術と鑑定以外は、キーコ他コアたちがスキルオーブを作ってくれたおかげだ。

 鑑定はアカネが色々とキエンダンジョン内植物をじっくり観察していたら、すぐ生えた。元々の職業が庭師なこともあったのだろう。


 魔法もスクロールでの取得だが、まだまだ魔力が少ないので使える魔法も少なく、威力も低い。

 装備で盛りまくっているが、防御力も魔法防御力も低いのが頂けない。


 万能結界を錬金術で柔らかくして素材として使い、身体全体を覆う防御特化スーツを開発してみたが、さすがに換気が悪過ぎて汗だくになってしまう。呼吸は確保出来るのだが、激しく動く時の装備なので熱の発散が問題で。

 まぁ、水中や寒冷装備で使えるのでこれはこれでいい。


 ******


 翌日、朝食後。

 アカネはタブレットと本でこの世界の常識やアリョーシャの街の基本情報を学び、シヴァは装備開発について色々考えていた所、エーコから連絡が入ったので、アカネやキーコにも聞かせるため、スピーカーにする。


【マスター、エーコです。至急の用件ではなく、立て込んでいたようなので報告が遅れました。昨日も強盗は一件もありませんが、商業ギルドの方で『『こおりやさん』店長に会わせろ』と騒いだ人たちが数人いたので、パラライズを撃ち込んで警備隊の牢に影転移で送っておきました。夕方、自販を回収した後、差し入れをした時に事情は話しましたので問題ありません】


「おう、任せっきりで悪かったな。差し入れまで気を利かせてくれて有難う。強盗は出なくて何よりだ。何を差し入れた?」


【オーク肉丼とやかんに入れた冷たい麦茶です。がっつり系がいいかと思いまして。好評でした。紙容器で丼型も作りましたので、容器回収の手間もありません】


「メニューも容器の配慮もばっちりだな。ありがとう。エーコ、今日もよろしく。時間を作って妻も連れてそっちに行くから」


【はい。お待ちしております】


「はい!」


 通話を終了した所で、アカネが手を挙げた。


「はい、アカネ君」


「自販機、じゃない、自動販売魔道具の強盗ってこと?かき氷や冷水なのに?」


「…あーそっか。その説明はしてなかったな。氷を作る魔道具はあっても、無茶苦茶高価でほぼ裕福な貴族しか持ってねぇし、そう速く凍るワケでもない。氷の魔法使いはいても食べられる氷を出せるのは更に少ない。

 で、かき氷の自販は時間停止のマジックバッグを使ってるってことがすぐ分かるんだよ。マジックバッグ自体はCランク冒険者以上の半分ぐらいは持ってるけどな。ダンジョンから出るから。でも、時間停止は滅多に出ねぇ。

 でもって、自販自体、レア素材を使いまくってるから、一台の素材だけでも国家予算五年分ぐらい、自販の仕組みも最先端だし、ドラゴンブレスも平気な結界も使ってるから、もっと、という天文学的な価値ありなワケ」


「なるほど。凝りに凝りまくっちゃったワケね」


「それもある。もし、作る技術があったとしても個人だけで作るのは到底無理だろうな。素材から採取で今の数を作るのならおれだって何年もかかる。どこに目的素材があるのか?で、行ったことがない所には転移が使えず、わざわざ行く所からだしな」


「ダンジョンマスターだからこそ、ね。でも、そんな高価高性能自販が何十台もって、誰も不審に思わないの?この世界の技術じゃないって」


「転生者が一人ひっかかったぞ。自販見て前世を思い出したタイプ。結構軽はずみだったんで警告しただけ。話を聞くと四十年ぐらい前の日本人だった。他の転生者はもっと新しい年代なのに、二百年前ぐらいにいたから、時間の流れはその時によるらしいぞ。おれらより未来から来てる転生者、転移者はいないっぽい。今まで見付かった記録や残ってる物からするとな」


「そうなんだ。この世界の人たちの反応は?」


「分かってても黙ってる人もいれば、弱みだと思って指摘する奴もいた。自販以前にバイク作って乗り回してたら、騎士に捕まえさせた領主もいたな。ワザと捕まって失脚させたけど」


「え、バイク作ったんだ?」


「そういや、まだ見せてなかったっけ。転移での移動ばっかで」


 アカネを屋敷の外に連れ出してから、ほら、とシヴァは魔力駆動の魔道具バイクを出した。

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