第4話 新星の目覚め

270/2/13?




 暗い。いつもとはまるで違う。ここは夢の中?いつも見ているあの夢とは違い、周りに影はいない。《


無》が広がっていた。




 (なんだろうこの違和感...いつも見る夢とはまるで違う...変な感じ...)




 妙な胸騒ぎがする。何も見えないのに首を絞められているような。いろいろと考えているといきなり真後ろではっきり声が聞こえてきた。




 「小娘、俺が見えるか?」




 びっくりして勢いよく振り返る。そこには驚くほど大きな鬼がいた。8mは優に越しているだろう。顔には疑いの表情を浮かべた仮面をつけていた。自分が圧倒的に下位の存在であると一瞬で理解させられた。生態系ピラミッドの頂点と底辺にいるかのようなそんな気がした。




 「見えているようだな。まぁ気楽にしろよ。別に取って食ったりはしない。なに、手を貸そうってんだ、もうここ30年、ずっと暇なんだよ。俺たちは受肉しないと下界へは出られないからずっとここにいるだけ。それが嫌だったもんで前からお前のことを見ていた。そこでだ、俺は暇つぶしのためにお前に力を貸す。お前は強くなれる。どうだ?悪い話ではないだろう?」




 確かに悪い話ではない。現にシルシは強くなりたいと本気で願っていた。そんなところにころっとおいしい話が転がってきたのだ。シルシに迷いはなかった。シルシは分かったと首を縦に振った。




 「お前、もう能力を持っているのか。後天的に付けたやつみたいだけど、お前運ないな。主に目に能力の核があるんだな。よし、能力の代償にお前からは目をもらおう。あぁ大丈夫、お前が見ていた景色は能力の目を使ってたから元の目はもう使われてないよ。」




 彼は笑いながらそう言った。驚いた。彼は私より私を知っていた。前から見ていたというのはあながち間違いではないのかもしれない。




 「小娘、名前は?俺は疑鬼っていうんだが、好きに呼んでくれていいぞ。今から特別にお前だけは対等な存在として認めてやろう。よろしくな。」




 シルシは一瞬理解ができなかったが、名前を聞かれているのだと理解してシルシ、とだけ声を発した。その声は小刻みに震えていたが、その震えが恐怖によるものなのか、武者震いなのかは彼以外誰もわからなかった。


 


 その後、疑鬼に能力の詳細を聞くことにした。疑鬼曰く、


 ・相手の心情を見抜くことができる


 ・嘘をついた相手の能力の吸収、封印


 ・幻覚、幻聴


 ・疑鬼の召喚


                      


 といった能力が主な固有能力だそう。




 「お前が能力を使えるとは思わないが、疑鬼の召喚の能力でいつでも精神空間内で召喚すればコミュニケーションが可能だから何でも聞いてくれ。」




 期待はされていないらしい。シルシは苦笑いするしかなかった。ともかく、と疑鬼は姿勢を正す。




 「能力は成長するから俺が知らないことも起こるかもしれない。それに、能力を使いすぎると暴走することがあるから気を付けるんだぞ?」




 と忠告してくれた。その忠告を胸に、シルシは静かに夢から覚めるのだった。






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 登場人物紹介




 個体名 シルシ (16?)


 種族 人類種


 先天的能力 未発現


 後天的能力 ブレインノート


 固有能力  疑鬼




 ・謎の地下通路で目を覚ました記憶喪失の少女。


 新たに疑鬼の能力を手に入れた。

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