第92話 意外な真実(閲覧注意)

『気持ち悪い話とな?』

 八木が食いつく。こいつこの手の話好きだったわ。


『えっとね。ラスルトさんの真黒な何かで……私が倒れちゃった時なんだけどね。多分あの時ラスルトさん興奮しすぎちゃって……えっと。 雄の……あれ。出しちゃってたのね。その臭いもきつくて。』


『『ぶはww』』

 丈二と八木が噴き出す。ケレースは……意外とオェ~とジェスチャーしている。


『もう!ちゃんと聞いてよ~! その臭いが残っているの。あのベットとか諸々に~。』


『ん。真剣に考えると……ラスルトは、ここに来て致したことになるのか?』


 え? ちょっとまて、どうゆうことだ?


 確かにこの小屋を管理していたのは、領主ではなく「息子のラスルト」ではあるが、記録上では、小屋を結界で封印をした時以外では来ていないはずだ。それは、八木が領主の施設管理記録を見つけいて、丈二もそれを確認をしている。


『アビーちゃん。血がどうのって言ってたよね? んで、その血は2年前のゼアスが死んだときと時期が同じだと思うって言ってたよね? じゃ、このラスルトの「何」は、いつ頃のだと思う?』


『恐らく、血の時期より前……かな? さっき「うわっ」って声出しちゃったけど、その後、心の中で「えっ?」って思ったんだけど、その理由がそれの「古さ」なの。』


『その信頼度は、自己分析でどれくらい?』

 八木が、何かカタカタしながら聞いている。


『ん~、自信がないけど時期は50%くらい。「アレ」の出どころが、ラスルトさんなのは……多分間違いないかなぁ。 ……もう!そんなのが分かるなんて、恥ずかしいんだよぉ。』

 アビーが、気持ち悪そうに、少し恥ずかしそうに語ったのはそうゆうことか。


『えっとね。多分、国宝でもいいような結界を小屋に張ったということは、領主の息子と言えども、宝珠の持ち出しは『記録』に残っているのね。 それを考えると、ラスルトが結界を解いてまで、その後、ここにきてまで……「いたす」ことは考えられないと、僕は思うのね。』

 そう言いながら、八木は丈二に持ち出し記録を送る。


『だが、ゼアスの死体が見つかった日より以前に、ラスルトがここに来ていた……。これは、あいつらが自白ような証拠にはならないだろうが、俺たちが「ラスルトとゼアスが繋がっていた確証」を持つには十分だよな。』


 でも、酷く……嫌な感じを受けるなと、丈二は眉をひそめる。


『それはそれで、私としては……。本当に本当に、頭の整理に時間がかかりそうだよ……。』


 組合長として、一連の騒動について、ラスルトの尻尾を掴んでしまったこの事態と、当時では考えにも及ばなかった「ゼアスとの関わり」について、ある程度の確証を持ってしまった状況に、戸惑いを消化しきれていないのであろう。


『あー、それでね。 ゼアスの血が部屋中にあるのも奇妙だって思ったんだけど、「もうひとつの血」っていうのがねー。』


 アビーの衝撃的な発言は続く――。

 しかも、今回のは、彼らにとって爆弾な発言である。


『もうひとつの血っていうのがね。 あの『キモピオンの血』なのね。』


『『『えっ…』』』


 この発言に、流石に一同は声を失う。

 流石にジアス・ピオンまでもが、その時期に関わっていたとは、誰も予想をしていなかったのだ。


 ◇


 ―――カタカタカタカタカタッ。

 

 八木のキーボードを叩く音が、脳内に響く。

 皆が無言で考え込んでいる。


 組合長や丈二のその表情を見たエルビスが、空気を読まずにニヤニヤと勝ち誇ってくる。

「そろそろ、見切りを付けてもいいのではないのかね? そう。その顔! 君たちも、ここには、何もないと諦めた顔ではないのかね?」


 ある程度の事情と、丈二の能力の一端を聴いていた「三つ葉」のアークメイジのフリージアは、その勝ち誇ったエルビスの態度を見て、心底不機嫌な顔で言う。


「皆、必死で事実確認をしている最中。これ以上、真剣に仕事をしている人の邪魔をするのなら、妨害行為と見なして、宣誓したとおり殺すよ? 組合長が終わりと言うまで終わらない。それでOKorPK?」


 フリージアの制止で、時間はできた。

 もう、エルビスには、嫌味を言う度胸は消え去っているようだ。流石はB級冒険者なのだろう。


 丈二は、カットレイに脳内会議の会話を替わってもらうよう、アビーに頼む。



 脳内の会議は珍しく花が咲いていない……。


 正直、彼らにとって、この時間は「茶番」であった。

 いや、それは、今でも続いているのであるが……。

 如何せん、予想もしていない真実が、ふたつも見つかってしまったことで、これから、どう動くべきかと皆が考え込んでいる。


 冒険者組合長シトリアルもそのひとりではあったが、実は少しだけ「自分が何時も頭が禿げてしまうほど、君たちは僕の予想を超えてくる。 その辛さが、多少は分かって貰えたのではないかな。」 と、この雰囲気を、そう……少しだけ楽しんでいた。


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