第66話 猫姫親衛にゃい(6)忠誠
『ぶはっ!流石若月ちゃんー。斜め上。』
丈二の協力者で地球から情報を送れる親友の八木がキーボードをカタカタと打ちながら笑う。
『猫姫親衛「にゃい」だぞ。そんなの辞典で調べれるのか?』
『それが…あった。ほれ。ぶはw』
親友から送られてきた情報を見て、凄いなと丈二は笑い、サニーとリリアにそれぞれ伝える。リリアは「あはは…」と苦笑いをし、サニーはこれをどう伝えたものかと眉をハの字に歪めた。
「しかし、うちの新人は面白い…」と、憂鬱な気持ちに苛まれていた丈二は、気持ちを切り替えて、組合への報告と交渉をしっかりと進めていくことが出来たのであった。
※ ※ ※ ※
うーんとサニーは元気になった黒猫ツブリーナの行動を眺めている。
ツブ猫が鬼教官と化している。
「とら!みけ!着いてこれてないにょ!親衛にゃいは一日で成らずにょ!」
「はいにゃ!ツブ教官。」
「ヨシにょ!」
さっきまで毛づくろいをしていた猫達が腕立て伏せをしている。
「よく頑張ったにょ!僕は感動したにょ!整列!」
整列した親衛にゃい5匹。直立不動である…。
「番号にょ!」
「1にゃ」「2にゃ」「3にゃ」「4にゃ」「5にゃ!教官全員揃いました!」
「ヨシにょ!」
若月は…ベンチに座り首を曲げ口から湯気を吹いている。
「猫ちゃんは四つ足でちょこんと座っているのが可愛いですのに…可愛いですのに…。」
「はぁ…」とサニーは溜息を付く。この1時間で何度付いたことであろう。
「若月様。今ご主人様に確認を取りましたが…猫姫親衛にゃい…聞きますか?」
サニーは若月に聞く。聞いたらまた「ふぇえぷしゅー」であろうが…。
「え?はい。もう驚きませんから。」
「あ…はい…では。」
絶対に驚くのだろうなと思いながら、八木が見つけた情報を伝える。
◇
「八木様が検索された情報です。猫姫親衛にゃいですが…」
サニーは八木が検索したと前置きをして、間違いない情報であることを暗に伝え猫姫親衛にゃいについて話し出す。
内容はこうだ。
・猫姫親衛にゃい。猫姫と信頼関係を築いた猫の信者が名前を賜ることで進化した猫の上位種のひとつ。魔物ではなく、あくまで猫である。
・親衛にゃいは、絆が強く、猫姫とその主人及び親衛にゃい員とで強いパスの繋がりを持ち、何時でも「念にゃ」が出来る。
・親衛にゃいは、二足歩行が可能となる。但し、四足歩行の方を好む傾向がある。
・親衛にゃいは、「固有スキル」を持ち、武器の所持が可能。 等々…。
そして…親衛にゃいは「一生涯」猫姫の傍に仕える。
であった。
「ふぇええええ。あ…でも、猫ちゃんは猫ちゃんなのですね。良かった。ふぇええん。あ…でも、一生涯私に仕える?えーと?あれれ?あれぇ?」
ぷしゅんと音がして若月が静止する。
「うーん、ツブ猫。今、若月様は何に対してオーバーヒートをしたのでしょうか?」
「ああ。今にょにょ? あれにょ。この馬鹿は僕の下僕にょ。だから僕に一生仕えるにょ。で、この5匹は下僕の下僕にょ。下僕に一生仕えるにょ。でも、結局全部の世話はこいつがするにょ。多分、そこが混んがらがって「ぷしゅん」したにょ。」
「あぁ…「そこ」なのですね。流石若月様です。」
「念にゃ」は、丈二とサニーもしており、眷属契約の説明を受けている若月なら驚かない気もしたが、普通ならばまず、「二足歩行して」「固有スキルを持ち」「武器を扱うことが出来る」に猫が進化したことに対して、驚くべきなのではないだろうか…とサニーは思い苦笑いをする。
「ところで、ツブ猫。あれだけ煩わしそうにしていたあなたが、猫達の教官をするとは、どういう風の吹き回しなのですか?」
若月の静止理由に納得したサニーが、そういえばと不思議そうにツブ猫に聞く。
「面倒くさいけど、そうなってしまっては仕方がないにょ。それなら鍛えて僕の使える手駒にするのが賢いにょ。それに…。」
「それに?」
「こいつらは、何時か下僕を助けるにょ…。そんな予感がしたにょ。」
恥ずかしそうに、顔を背けるツブ猫に…
サニーは優しい眼差しを向け、彼だけに聞こえる声で言う。
「ご主人様ではありませんが、本当に愛すべき悪魔ですね。ツブ猫。」
「ふんにょ…。」
※ ※ ※ ※
その後は、若月のお願いで、猫達は健気に店の外の傍らで整列をして、ご主人様を守るにゃと忠誠を見せている。
わっふるを作り、会合に参加し、ギルドに加入して…と、彼女が意図しない目の回るような展開に巻き込まれている間ずっとである。
その光景は、何時の日か街の人々から「歪な猫姫」がいる目印と呼ばれれ、微笑ましい光景として認識されていく。
猫達は、普段は普通の良い猫であることに努める。
街のちょっとした悪戯者は、可憐な猫姫のマスコットとして、ちょっとした人気者に変わっていく。
そして。
ツブ猫の予感の通り、この5匹の猫達は、ご主人様の猫姫を果敢にも救うことになるのであるが…それは、もう少し先のお話となる。
最後に、彼らの寝床についてであるが、若月の宿泊先「そよ風の響き亭」では(ツブ猫は別ではあったが)5匹の猫達と一緒に泊まる部屋は空いておらず、マスター丈二にそのことを相談をしたところ、彼(とその親友)は、目を輝かせてBARに併設された「道場」の一角を提供してくれた。
まぁ…このことが、この5匹の猫の運命を…大きく…色々と変えたことは、言うまでもないであろう。
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