第64話 猫姫親衛にゃい(4)名前

 BARみたらし団子に着くと、若月は直ぐに先に戻ったサニーに猫達のことを話す。


「あら。流石猫のお姫様ですね。」

 人型となっているサニーが笑顔で答える。


「お庭で遊ばせていいそうなので、一度中を通らせて頂きますね♪」

 猫達と、もう少し一緒に遊べるのでウキウキの若月なのだが、

 それはサニーに止められる。


「若月様、流石にBARをそのまま通させるのは如何なものかと思います。衛生面が気になりますし。もしもの時は、ご主人様にご迷惑となります。」


「あら。気が付きませんでした。あれ?でも、わんこのサニーさんとツブちゃんは良いのでしょうか?」

 はてはてと考えながら言う若月に、ツブ猫が、ふんと言いながら教える。


「僕たちは魔法で、ちゃんとキレイにしてから入ってるにょ。」

 と、水魔法「ウォーターウオッシュ」を尻尾を振り自分を洗う。


「おおう!便利ですね。お風呂いらずじゃないですか?あ…でも、お風呂に入れないのは困りますね。うーむ。」


「魔法では、奇麗にはなりますけど、疲れやあの癒しはありませんからね。」

「そうなのですよね。でも便利です。」


「まぁ。どれだけ要望しても、お前はもう覚えられないにょ。そうゆう運命だから諦めるにょ。ふん。」


 猫姫剣士となった時の「呪い」により彼女はこれ以上スキルを覚えられないことを思い出す。

「あぁ~。そうでした、新しいスキルや魔法が覚えられないのでしたね。」


「その事なのですが、ご主人様の固有スキルなら魔法はひょっとしたら覚えられるかもしれませんよ?」

 サニーが依頼で移動していた時に丈二とパスで話していたことを思い出して言う。


「そなんですか?」

「可能性としてですけどね。そこはまた、ご主人様とゆっくり。」

「…んにょ。確かに可能性はあるにょ。まぁあれにょ。下僕の下僕を洗ってやるからさっさとするにょ。」


 ツブ猫が仕方ないにょと、猫たちを洗い、トラ猫を始めとした猫5匹が「お邪魔しますにゃ」とBARをてこてこ通り、中庭に抜けていく。


 ◇


 本当に、お行儀がいいですねとサニーは微笑み、昨日の残り物でご飯を支度しだす。若月は皿を用意してサニーに渡し、先程露店で購入したミルクを先に猫達に振る舞う。


「ミルクにゃ!ミルクなのにゃ!」

「押すにゃ!僕が飲めないにゃ!」

「私が先にゃ!順番を守るにゃ!」

「順番って何にゃ!それなら私が一番にゃ!」

「はぁ…醜いにゃ!」


 5者5葉の反応をする猫達を見て、「あ。そうでした。名前を付けてあげるのでした。」と思い出す。


「ふふふ。ミルク大盛況じゃないですか。良かったですね若月様。よろしければ、これを運ぶの手伝って頂けます?」


 サニーがドアから中庭を覗き声をかけるその手には、ボア等の干し肉や野菜の料理が盛られてたお皿が。それが、5つに分けられている。


 それぞれの前にお皿を運んで給仕するふたりが、「みなさんの前にお皿が行くまで勝手に食べてはいけませんよぉ」言うと、「はいにゃ」と涎たらたらの猫達が丸めた背中を震わせ、にゃんと待っている。


「はい。出揃いましたね。それでは、皆さん、お召し上がりください!」


「いただきますにゃ!」×5


 ◇


 トラ猫、ぶち猫、白猫、みけ猫、シャム猫が整列しながら、皿をがつく。


「サニーさん。こちらの世界では、みけ猫とかシャム猫とか種類があるのですか?」

 ふと、日本での猫の種類がこちらで通じるのか疑問に思い、若月はサニーに聞く。


「いえ。若月様達のように分類をしていないと思います。猫は猫です。確かに、黒猫や白猫…などは、そのまま色を付けて呼びますし、トラ猫も柄が虎に似ているので、そう呼ぶのかも知れませんが、血統的な分類での呼び名は無いのです。」

 

 ほへぇ~と言っている若月にサニーは続けて言う。


「どちらかと言うと、こちらの世界では、私の「ホワイトウルフ」…私は亜種ですが、それと、よく聞く「コモンウルフ」のように、強さや進化なので異なる、その「種族」に名前が付けられている…そんな感じですね。言い換えれば、『魔物の職業』とでも言いましょうか。」


 あぁなるほど。

 それなら、シャム猫の様な呼び名は、私かマスターしか分からないですね。

 と、そのことを鑑みて、若月は「名前」を考える。


 よし!それならば、シンプルにいきましょう。

 と、若月は彼らの「名前」を決めた。


 本当に簡易的な名付けだけれど…それはそれで可愛いと、若月は思い口元が緩む。


 ※ ※ ※ ※

 

 数分後。

 黒猫がブツブツ言って言る。


「下僕が先に、「この世界の猫の名前の傾向や、名付けの感想」を僕か狼に聞いていれば、きっと、こんなことにはならなかったにょ…この馬鹿下僕(ブツブツ…)」


 と、黒猫が、干からびながらブツブツ言って言る。



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