第54話 黒猫盗賊実食!(閲覧注意)
「それにしても、お前らよく食べたなぁ~。」
丈二は、猫姫コンビを見て言う。
「あれくらいはおやつにょ。」
「あははは…。隣でまた、つぶちゃんが食べだしたので…つい。」
「若月ちゃん。それ理由になってないけどね。」
若月があっちの世界に行っている間に、マウントカウを解体してBBQを楽しんでいた丈二とサニーであったが、若月が我に返った後にその食材は全滅する。
黒猫がむくりと起きて横で肉を食べだすと、若月は「ひぃぃぃい」と言いながら、何故か肉を食らう。
その無限ループで、マウントカウの美味しい部位はあっという間に無くなった…。
「まぁ、この部位は取れたてが一番美味い。仕留めたものの特権ってことで、みんなが堪能したのなら、それでいいんだけどね。それ以外はチームで分けるから、これで終わりでいいかな。」
「だ…いじょうぶでしゅ。」
「にょ。」
「それじゃ、残りの血抜きしたのをしまうぞー。ツブ猫は自分ででいいよな?」
「当然にょ。自分で持ってないと人目のない場所で食べれないにょ…。」
ああ…そうか。つぶちゃんは自分の存在を自覚しているから、誰かに頼らないと人の街では暮らせないんのですね。
口ではいろいろ言うけど、私を頼る必要が契約した以上でてくるのですねぇ…。
若月は、黒猫の儚そうに言ったひと言で自分の役目を少し理解したように思えた。
「若月ちゃん。俺はこのバック…少数だけなんだが何でも入るんだ。そして、ツブ猫のお腹はかなりの容量を収納できる魔法空間となっている。」
丈二は、自分の取り分となった魔物をマジックバックに収納していく。
黒猫は黒猫で、あの禍々しい雰囲気は醸し出していないものの、顔を10倍に拡大させて牛と猪を丸のみしていく。
「ふ…ふえええええええ。」
若月は軽く先程のフラッシュバックを覚え叫ぶが、丈二に自分の報酬部位を解体しろと言われ、その作業をすることで落ち着きを取り戻した。
※ ※ ※ ※
街への帰り道。
若月は、少しだけ森林内に感じた危険が気になるが、黒猫ホラーショックもあり、明日からの依頼の心配に切り替える。
丈二も、そのことを気にはしていたが「取敢えずは冒険者組合の仕事だな。」と組合への報告で済ませることにする。
街まで残り30分程度のところで、数人の盗賊に襲われるも、丈二に促され「歪な猫姫」全開となった若月が、頭目と思われる男をあっという間に3枚に下し、それを見た盗賊は全員逃げて行った。
盗賊などの犯罪者を討伐した場合、
その場合に、身の潔白を証明するため冒険者登録プレートを対象に近づければ討伐対象と認識され、ビンゴブックにある者であれば賞金が出る。
そんな不思議機能が適応されるのである。
討伐した頭目の戦利品が、敏捷系の腕輪であったため、サニー用にと丈二へ渡し、所持金の金貨3枚程度とシミター系の武器、討伐賞金を若月が貰うことになった。
臨時収入である。
で、問題はその頭目の死体なのだが…。
黒猫が「いらないなら食うにょ」とボリボリ…。
丈二は、若月が泡をはいて倒れるのではないか?と思っていたが、彼女は冷たい目でそれを見ている。
その後、ポツリと「便利ですね。」と呟いたのを見て。
「本当に、この娘は御しがたいにょ…」と黒猫のセリフを口にして苦笑いをする。
そんな、
門番の前では、若月が人を3枚に下した業により、中に入れないのではないかとプルプル震えていたが、丈二が笑いながら仕組みを説明し、無事にアライメントクリアで街の中に入ることが出来た。
街の中を流れる川の光景を見て胸をなでおろす彼女を見て、丈二とサニーは目を合わせてクスッと笑う。
※ ※ ※ ※
時刻は夕方より少し前、冒険者組合は依頼報告の冒険者で溢れている。
リリアも仕事に忙殺されているのが見てわかる。
このような場合、担当受付嬢は固定窓口となるため、冒険者は、各窓口に置かれた木札を取って順番を待つ。若月がその木札を取りに行くとリリアは気が付き、片目をつむり挨拶を送る。
木札を持って席に戻ると、丈二がエールを飲みながらサニーの鬣を撫でており、黒猫はミルクを舐めている。机には若月用なのであろう暖かいお茶が置かれており、この人の気配りは毎回気持ちがいいなと思い席に着く。
彼女が席に着いたタイミングで「なんか、今日騒がしいな。」と丈二が周りを見ながら黒猫に言うと、「そうだにょ」と黒猫が小声で呟いた。
若月も気になり、周りの冒険者の会話に聞き耳を立てると、どうやら、魔物の数が少ないだの大いだの、そんな話題が大半を占めているようだ。
お茶を嗜み、冒険者の話に聞き耳をたて「このような時間もよろしいですねぇ」と密かに楽しんでいるとリリアから声がかかる。
登録プレートと討伐部位を渡し清算をして貰うと、リリアから質問される。
「若月ちゃん。プレートに盗賊討伐が出てるけど、倒したのかな?それなら一緒に清算でいいよね?」
「はい。すみません言い忘れていました。お頭さんだけ倒しましたけど、お仕事として認められますか?」
どれどれと、リリアがプレートを読み取りながら、ビンゴブックのような綴りと照合して言う。
「あ。この辺りで結構悪いことしてる盗賊団のボスだね。警備兵から懸賞金も出てるからいい額になるよー。」
「わぉ!」
「えぇーと。今回の依頼、ツブちゃんのお世話も併せて、合計が銀貨2枚。盗賊ボスの懸賞金が金貨1枚だから、大儲けだね!」
リリアが報酬を用意し若月に手渡すと、丈二が小声でリリアに聞く。
「リリア。少し2人で別室で話せるか?」
「え。今からですかぁ?い…いいですよ。ふゃぁ。」
頬を赤く染めてリリアがもじもじ…。
若月も「ははぁ~ん。さてはリリアちゃん」と思いニヤリとする。
しかし、丈二が真剣な顔で、
「少し気になることがあったから報告しておきたくてな。ツブと若月ちゃんも関係してるから、ちょっとここでは…な。」
と言うと、リリアも察して真剣な目で首を縦に振る。
「若月ちゃん。森のあれを組合に報告して来るから、ツブ猫を連れてBARで待ってて。」
若月もあの感覚が気になっていたので、コクリと首を振る。
※ ※ ※ ※
BARへの道中。若月は黒猫に森のことをどう思うか聞く。
黒猫は、眠そうな目を擦りながら、「昨日今日冒険者になった下僕が気にすることじゃないにょ。」と言って欠伸をする。
その後、ちょっとだけ目を開けて
「明日の狩りの日は、調査の日に変更だにょ。」
と、若月に聞こえない声で言った。
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