第53話 黒猫牛実食!(閲覧注意)
「もう。干し肉だけでは消えてなくなるにょ…。」
黒猫がまた干からびかけている。
木の下の堀で血抜きをしている食材達を弱弱しい目で恨めしそうに見ている。
倒したのは、グレートボア5体、マウントカウが7体である。
すべての頭を落とし、ボアの牙と牛の角を討伐素材として仕分けてある。
ボア全部と牛5体は猫姫ペアが倒しているので、黒猫は倒したのは全部こっちのもんにょと騒いでいたが、干からびていく度にどんどん態度は軟化し、最後はボア2体をチーム「(仮称)みたらし団子」にくれた。
これは元々その予定であったのだと丈二は踏んでいる。要は天邪鬼なのだ。
まずは最初に首を切り、結果血抜きをしたボス牛が仕上がる。
「ツブちゃん。このお肉をどう切り分ければよろしいですか?」
と、主である猫に若月は尋ねる。
「何を言っているにょ…マウントカウは丸かじりが一番って…相場で決まっている…に…ょ。」
「ふぇええ。ま…丸かじりって意味がわかりませんよお。」
あ。これ、マジで限界だなと丈二は黒猫を、ボス牛の前に抱いていく。
「若月ちゃん。グロテスクなの大丈夫?人の死体以外で。」
「ゾンビとかの映画は意外とダメな方でキャーキャー言ってましたが、箱庭の試練を受けてからは体験しておりませんので、どうなのでしょうか。」
「んー。今から結構ホラーになるかも知れない。でも、ツブ猫が限界くさいので心の準備は異常終了。」
と、黒猫を置く。
〝ふにょおおおおおおおああああああああああぅぅあ″
黒猫の顔が直径3mぐらいに膨れ上がり、悪魔のような赤く染まった釣り目を光らせ、裂けた口でボス牛の半分に噛みつく。
ボリボリボリボリボリボリボリボリバリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリ
骨を噛む音が辺りに響く。
ボリボリバリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリバリボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリ
残りの半分を食べ終わり、干からびた体は元の黒猫に戻る。
「げふっ…。美味かったにょ!褒めてやるにょ。」
「・・・。」
「流石に初見は固まるよなぁ…。俺も初めて見たときに、隣のおばあちゃん良く心臓止まらなかったって思ったもん。」
「・・・。」
「ふ…ふえええええええええええええええええええええええ!」
「おかえり。このお仕事の報酬の意味がわかったかな?」
「ふ…ふ…ふふ…ぇ」
「君が従属してしまったことの意味が理解できたかな?」
「ふ…ふ…ふええええええええええええええええ!」
『ご愁傷様…アーメン。』『南無南無っす。』
「後悔してももう遅いにょ。それが悪魔との契約ってやつにょ。」
文字通り1頭丸かじりを済ませた黒猫は「ふぇ」しか話せなくなっている下僕の頭にぴょんと飛び乗り体を丸くする。
若月の頭の中にリリアが言っていた「街の外で適度な運動?ん~これさせるのか…」と「運動したら大人しいからつぶちゃん」の言葉が木霊する。
リリアさん…運動したら大人しいからつぶちゃんって、これが運動って意味だったんですね。では、その前の餌やりは一体なんだったのでしょうか…ぶつぶつ。
徐々に戻る思考の中、これを一生見るのだから慣れるしかないとピヨピヨあひるが回る世界を、あへ顔で見ながら若月は自分にそう言い聞かせていた。
『しかし、若月ちゃんは人を平気で斬れるのに、この手のは駄目だったんだな。八木君大正解!』
『あざーす。』
丈二は、親友と想像していた光景にそう会話しながら、回復する彼女を余所眼にマウントカウを解体して、うまうま部位を焼いていく。
その後、こっちの世界に戻った若月にその肉を食べるかと尋ねると、大きな目に涙を浮かばせながら、大きく頷き、今し方、バリボリとかじられていた魔物を、しっかり頬張る彼女の姿を見て「やっぱ歪だわ!!!」とマスター丈二は目を細める。
最後にケレースが
『それにしても、あの黒猫。ナイスな「キューバ」で「サンバ」な骨の響きでしたっすねぇ。』
と謎めいた感想を自慢げにボヤいていたが、丈二も八木もそんなトンチはいらないなと聞かないフリをした。
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