第3話 旅立ち

 

「さて、いらない情報は処分したことだし。そろそろ出発したいと思います。」


 ケレースのデータを笑顔で消した丈二は、二人の女神に告げる。


「消すとか酷いっすねぇ…。絶対後悔するっすよ?」

 ケレースがぷんぷん!と怒ったジェスチャーをして言うが、丈二は無視をして、お礼を言う。


「ありがとうございました。元の世界に戻れる「何か」を達成出来ましたら、オプス様。また、お会いしましょう。」


「は?ど~ゆ~ことっすか!」


「こちらこそ。良い出会いでした。では、最後の最後に、あなた達をお送りする場所についてです。」


 オプスは地図の映像を出す。


「この世界にあるオールス大陸には、中央にフィディーエ、南方にロームス、西方にベリーア、北方にサビーニ、東方にラティールと「5つの国」が隣り合っています。」


 各国を指しながら説明を続ける。


「その内、ロームス王国の南方に「フィルム」という街があります。あなた達を、その近郊の川沿いの草原に送ります。」


 少し地図を拡大し示す。


「この辺りに送る理由は、比較的治安が良いこと、また、コモンウルフが生息しているため、狼の姿のサニーをあなたが連れていても、隷属していると皆が思い怪しまれない為です。」


 早速の情報なので、地図情報を瞼に焼き付け質問をする。


「概ね、この地図で見てどのくらい距離に送られるのでしょうか。」


「そうは遠くない距離にはしますが、人目には触れないほうがよいでしょう。10km程度は歩いて頂くことになると思います。」


「ありがとうございます。地図のスケールが気になったので質問しました。概ね理解しましたので問題ありません。」

 笑顔でそう答える。


「では、時間です。あなたの新しい世界での人生に幸あらんことを。」



―――女神オプスから眩いばかりの光が丈二とサニーを包む。



「本当に本当にありがとうございました。『目標を達成するには、全力で取り組む以外に方法はない。そこに近道はない。』を肝に銘じて頑張ってきます。またお会いしましょう!」


「元気でやるっすよ~~~!ぷ」


 最後に見た二人の姿が…いや、堕女神のあの顔が最後の最後まで…折角の門出なのに結局不安でしかねぇ。


 ※ ※ ※ ※


―――目を開けるとそこは、透き通った小川の横に広がる草原であった。



「ここが新しい世界、かぁ~!」


 大きく伸びをして、緊張をほぐす。

 傍らには銀色に輝く美しい毛並みの狼がいる。


「サニーさんよろしくお願いします。」

《こちらこそ。よろしくお願いします。》


 お互いに改めて言葉を交わす。

 「一人と一匹」の新しい世界での旅が始まりであった。

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