三、きっかけ
それから僕たちはすぐに、デートに行った。
お互いの病気の事を話し合って、不覚にも運命だと感じだ。
夜9時のバーには、駆け出しのバンドマンたちが集まり。ライブをしていた。
当然僕には聞こえないのだが、彼女はうっとりしていた。
「顔が見えない分、音楽に集中できるの。でも今日は貴方がいるから、集中できないわ。」
こんな事を言って僕の心を引き込んでゆく。
細身の彼女は柱に両手を添えて、不安そうな顔をする。
僕の付き合ってくださいと言う告白に、笑顔で答えてくれた。
明日もやるこの店で落ち合おうと、約束した。
9時に店に着いた。昨日と同じように駆け出しのバンドマンが一生懸命に演奏を披露している。
だが、僕には関係ない。周りの空気を読んでただ盛り上がっているフリをする。
しばらくして、彼女が店にやって来た。
「ここだよ!」
彼女を呼ぶがこっちに来ない。
目があったような気がするが。こっちに来てくれない。
彼女のそばに行き、こんばんわと声をかけるが、よそ優しく、こんばんわと返事られるだけだ。今日はも沢山いるねと声をかけても
「そうですね」
としか返ってこない。
不安になった、寒気がする、頭の中に最悪なことが浮かぶ。
「僕のこと分かる?」
「すみません分からないです。人の事を覚えられない病気でして。」
最悪だった。
彼女は僕の事を忘れていた。え、あれは嘘だったのか、僕は馬鹿にされてるのか、それとも本当に僕のことが…。
思わず店の外に逃げる。息ができない。
辛い。苦しい。
相変わらず、エンジンの音がうるさい。
気づけば涙が止まらない。嗚咽。
頭の中が、パニックでどうしようもできない。
「こんばんは、大丈夫?」
わざわざ口を僕に見せて、ゆっくり喋る。綺麗な君が心配そうに、上目遣いで覗き込む。
「僕の事わかりますか?」
「わかるに決まってるじゃないですか!私の運命の人ですから。」
そこには僕の知っている彼女がいた。
そこから色々試したが、僕が泣いた後じゃ無いと、彼女は僕だと認識できないらしい。
勿論彼女には言っていない。、混乱するだけだろうし、これ以上辛い思いをしてほしく無かったからだ。
それから大変だった。、彼女と会う時は、頑張って悲しい事を考えて泣いた。悔しい事を思い出して泣いた。
彼女に逢う度に傷ついていった。
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