第11話

みんなゾーンって、ぱっと言われて解かるかな?

よく、漫画の中で試合の最中だとかに、急に主人公キャラとライバルキャラしかいない空間になって、そこで二人が勝負をしたりするんやけど。

実際、ゾーンに入った事がある人間ってあんまり多くないんじゃないかって、最近気が付いたんや。

そこで、今回は自分がゾーンに入った時の話しをするで~。

言っておくけど、自慢やないで。ヤバイ状況下でゾーンに入って命が助かったって話しやからな。

逆にゾーンに入らなアカン程の状態やったという事や。


あれは、早朝、会社に行くために車を運転していた時のことやった。

丁度、交差点で右に曲がるためにハンドルを切ったら、そこへ2tトラックが突っ込んで来たんや。

自分の予想よりも速く、対向車であるトラックが交差点に進入して来たんよ。

結果として、自分は車の左バックランプを破損することになったんや。

相手の運転手は、同じく左前方のランプを破損。

ちなみに、警察官が立哨で立っていた交差点だったため、彼がすぐに警察署に連絡を入れてくれたお陰で速攻、警察の御厄介になったわ。話しが早くて助かる、とも言うな。

結局、二人とも怪我はなく、お互いランプが破損しただけだったので自費で直す事が決まり、事の顛末を調書にしたため警察署を後にして、この話しは終わった。


んが、実際のところはどうだったのかと言うと、予想以上に速く交差点に進入して来た対向車(2tトラック)を目にした瞬間。

自分の脳がすうっと冷えていくのを感じたんよ。

次の瞬間、自分は真っ暗な世界におったんや。

そこでは、自分とトラック運転手は全裸で車に乗っていた。その上、車の形は白い輪郭だけで表現され、人間である我々だけが白く全裸で発光している存在として認識されるだけの世界やった。

その場所では、時間はひどくゆっくりと脈打っているのが感じられ。自分は、瞬間的に『この世界では、先にエネルギーを動かした者が勝つ!』それを全脳的に理解し、自分と相手が助かるためにはここでハンドルを切るのがベストだと判断を下した。

『相手が判断を下すよりも早く、自分が素早く判断し速く行動に移すと同時にエネルギーを動かしたもん勝ちの世界なんや!』

そう考えながら、遅く波打つ時の中で、自分のエネルギーと車自体が持つエネルギーごとハンドルを回すことでトラックの前から自分と車を逃し切った。

ハンドルを切っている間は、兎に角、自分の動きや世界の全てが驚くほど、ゆっくりと感じられて。

個人的に、世界がローペースに感じられた事が怖くて。それと同時に、『どうしてゆっくりとしか動けないんだ!』焦りでどうにかなりそうやったわ。

パニックにならなかったのは運転中で手と足しか動かせない状況だったから、それで判断だけは素早くできてハンドルを切れたのかもしれへん。


そして、黒い世界が潮が引くように後ろへと流れて行った後、パンッと軽い音がしてランプが破損した音が響いた。

自分は、車を車道の邪魔にならない場所に寄せ、交差点に歩いて行くと警察官とトラック運転手が話しており、自分がそこへ加わり警察署に連絡をさっさと入れていた警察官に促され、トラック運転手と共に最寄りの警察署へと向かった。

後は、冒頭で話した通り皆さんの知る結果に至った訳や。


別に、スポーツせんでも極限の状況下やとゾーンには誰でも入れる訳やけど。

あんまり、入りというない世界やね。逆にスポーツで入るのが正しいし平和な使い方かもしれへんなあ。


ちゅーことで、今回も最後まで読んでくれて、ありがとうな。

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