第10話

小惑星イトカワ、宇宙関連のニュースで一度は聞いたことがある名前だと思う。

イトカワの名前は聞いたことがなくても、惑星探査機はやぶさについては聞いたことがあるんじゃないかな?知らんけど。

あるいは、惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウに着陸して地表でサンプルを採取し、無事帰還してきたニュースを見たことがある人もいると思う。


これは、惑星探査機はやぶさが小惑星イトカワへ向かう数年前に自分の身に起こった出来事なんや。

夜、就寝すると自分はいつも小さな宇宙船に乗って暗い宇宙の中を沢山の星々に囲まれて、ただ一人ずっとどこかへ向かっていた。

その夢は、毎日、毎日、見ていた訳じゃないけれど、見る度に「これは、自分の魂の一部が宇宙船に乗せられて、どこかの星へ向かっているんだ」ということを朧気ながら思い出していたんや。

地球から惑星へ惑星から地球への旅は長く、独りぼっちで旅した宇宙は二年半に及んだ。

人にとっては長すぎる一人ぼっちの航海は、すっかり現実で生きてる自分をある程度、鬱にするくらいキツく苦しいものだった。


どうしてそんな事になったかと言えば、自分をこの長い航海に出発させた天使系の女性っぽい宇宙人曰く。

「小惑星イトカワに探査機を飛ばすにあたって、日本人のプロジェクトなので同じ日本人の魂が小惑星イトカワに向かい、そこに日本人の魂が降り立つ事によって魂の軌跡が出来上がり、それに沿って探査機は飛ぶ」のだそうだ。


嘘か本当かは、今となってはよく解からない。

兎に角、そんな説明を受けて自分は宇宙船に乗せられて、星の海へ打ち上げられて行く事になった。

宇宙船なんて、操作できへんとか言ったら事前に航路は入力してあるから、何もしなくてもいいという説明まで受けた記憶がある。


この長すぎる宇宙船の旅は、最悪な事に小惑星イトカワに一回行って地球に帰還して来た後、再度、二年半かけて小惑星に行って帰って来て欲しいと言われた時だった。

女性タイプの宇宙人が淡々と感情無く説明された、その内容があまりにもショックすぎたので、冗談抜きでよく覚えている。

自分の心が、底なし沼に落ちたかのような最悪な心持ちになったのを感じながらも「航路の変更はできませんか?もっと短い航路は無いんでしょうか?」一縷の望みをかけて聞くと、ぱっと目の前に白いスクリーンが現れ、自分が今回辿ったコースともう一種類のコースが明示され、同時に「こちらのコースも二年半かかります」という絶望的な説明を受ける事になった。

結局、自分はもう二年半、宇宙をたった一人でフライトする事になったんやで。

お陰で、この五年に及ぶ期間のあいだで、自分はすっかり陰キャになったわ。

何しろ、自分の一部が延々と暗い星々の海をたった一人、喋る相手もいない中ひたすら突き進むのは、精神に相当負担がでかかったんや。

このよく解からん任務に対し、発狂することなく終える事ができた事だけが救いやで。

本気で二度とやりたくない仕事ではあるよな。

ちなみに、この航海を終えた後は解放感からすげー明るくなりました。なるよ、そりゃあね!


サイエンスの道は、オカルトが造ってるのかもしれんね。

そんな事を考えさせてくれる出来事やったで。今回も最後まで読んでくれて、ありがとうな~。

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