第150話 小学生に人生を一瞬説かれる
訓練。実技がね、むずかしいの。
おうちで練習します。
でも二人一組でやるものだから相手がいたほうがやりやすい。
まあ、布を使うんですけど、バスタオルとかなら一人でできなくもない。練習できそう。
シーツの畳み方、なんですけど。
前後でどっちがどこを持って山折り、谷折りにするかが。中心が、とか。
抽象的にしないと習っていることが伝わって、そこから第三者の情報が漏れないようにちょっと気を遣って文章を打っている明鏡止水です。
とにかく、緊張したし、共同作業だし。
まともに学校に通えなかったり、フリーター歴しかない自分には難しいものです。
ちなみに、唯一の友人が言うには「正社員は居座って年月だけ経っていった人」みたいな辛口コメントでした。よほどひどい思いや扱いを受けたようですが。
わたしは、社会人、というものに憧れを抱くメンタルヘルスな時期があったので。頑張って働いてドカンと半年に一回ボーナスが出る正社員、すごい。
きっと大学の奨学金返済に充てたり、貯金やすっごく貴重な余暇のために取っておくんだろうなと夢見がちでおりました。
実際、正社員を経験している方、した方。
「正社員」とはどんなものですか?どんなものでした?
わたしは昔パートをしていた場所で大学生が
「フリーターじゃ結婚できない」
と言っていたのを聞いて、当時は「無」でした。
学生、自分より経験が多くて大人で先輩で怖かったし。それに、どうしてフリーターだと結婚できないのか深く考えることもなく、うつ病やらパニック障害に耐えながら通信制の高校を出てから足りない情報の中で流されてもがいていた、「なし崩しフリーター」でした。
フリーターにも種類があります、なんて授業が中学校でありました。今思うと、なんだかなあ、です。
時代はむしろ、あの時のフリーターを「目的のない若者、なし崩し的に定職つかない者たち」という視点から、非正規雇用者を社員となるべく対等に扱う、県によっては時給もアップしていく世の中へと移行しています。あれ?ちがう?
そんなことより、いまだに降りた駅で出口に向かう階段の方向がわからない明鏡さんは学生やサラリーマン、紙袋を持ったおばちゃんたちの流れに助けられつつ、電光掲示板の元へ行き、これまた慣れない時刻表示と行き先と、ネットで調べる停車駅の確認。
そして、発車時間を手元のスマホで時計代わりに現在を確認中。
そう、その時事件は起こった。
なんとスマホを見ながら歩いて小学生の集団に突っ込んでしまったのだ。
可愛い声で
「ちゃんとまえをみてあるいてね」
と。
可愛い声を表現したくて平仮名表記にしましたがね。
かれらは。
私立に通う制服に身を包んだエリート小学生達です。漢字も達者でしょう。
「ちゃんと前を見て歩いてね」が正解。
なかなかの、正論です。
きみたちは、ただしい。そしてかわよ。
そして、ぐはっ、とくる。
数ある歩きスマホの人の中(いけないこと)、なんと、じぶんが相手に迷惑をかけるなんて!
とっさのことですみません、も言えず。
また通学に慣れているのか。制服小学生達は足早にわたしより駅に順応した足取りで改札口へ。
わたしは、なんて無力で常識がないんだ。
あと、電車やバスで学校に通える小学生の能力と胆力、そして日本の平和に感謝を。
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