第136話 友達でライバルになれたら
わたしにはこころのライバルがいる。
その子は大学のことも進路のことも、奨学金のことも、掛け持ちしているアルバイトのことも、浪人?とやらをして大学に受かった彼氏のことも、なんだか上げればキリがないくらい。大学生で。
ああ。もし、同じように生きて自分も大学生だったら絶対にライバルにするのに。
おまけに名前も素敵なのだ。
不思議の国のアリスみたいで、書店員としていつかの夜のニュース番組でテレビに出て、書店に並んでいる本に女流作家が多いことなどに質疑応答していたことがある。憧れのライバルなのである。
職場は変わっていなければ東京のとあるところ。
わたしも本屋さんがよかったなあ。
でも、相手は電車に乗れる、現役女子大生。
正社員でアルバイト先に登用されていった。
入社二年で新人教育を任されて、資料を遅くまでPCを使って作り、わたしのアルバイト先にはその新入社員の数だけ鏡を買っていった。
長かった綺麗な髪をバッサリ切って、それでも余計に小顔が目立ち自信に溢れている。
きっと今もどこかで店長や、主婦や、転職や。
なんだか、ストーカーしたいわけではないけれど彼女がどんな表情でどう道を選ぶのか興味があるのだ。
要するに魅力的な。大学で専攻?していたどこかの言葉もどこの国の言葉?民族?という感じで面白かった。
わたし自身は嫌われていたかもしれない。
フリーターだったからだ。大学生にはフリーターというだけで軽蔑された。なんかそういう指導でもあるのかな。まあ、わたしも普通に大学生になってたら、フリーターはボーナスも貰えず、社会の歯車も、みんなで働く厳しさも知らないで済む生優しい奴ら、って思ったかもしれない。
しかし、病気からなんとか這い上がり、うつ病でも働いていた自分はバカになって働かないと、浮き浮きしていないと、元気でいないと。
それだけで覇気のないフリーターとしてしか認めてもらえない。
わたしは100均に勤めていた時はなりたくもないギャルみたいな軽さだった。入った当初はむしろ正社員か!というくらいに固かったのだが。現場が緩くて、苛立ちを覚えたのだ。前の勤め先では、たとえパート・アルバイトでもしっかりとした接客を!という教えだったので心は習ったこともなったこともない「正社員」だったのだ。
ある日。
おとなしそうな女の子。心のライバルの大学生ではない銀行員を目指している経済学部の子に
「だいたい三年いろ、っていうよね!でも、三年経ったらわたし何歳?!みたいな!!」
だれかわたしというギャルを止めてくれ。
おとなしい学生は静かにこのフリーターのお姉さん何もわかってないな、それは正社員に言えることだ、とは言ってくれなかった。
だれか、もっと早くにわたしにindeedや転職キャリアアドバイザーを紹介してくれていたら。
結果的に100均でもうつ病は継続されたままで、このままいけばダメになる。
普通の勤め人は次を決めてから辞めるが、精神疾患があると、ほぼ唐突に、適応障害です!!と診断書を押し付けてやめたりする。
わたしは母に次を見つけてからやめろと言われると悲しい。次が始められないくらい動けないのにもう次。
どうしてわたしを普通の大学生にしてくれなかったの。高校生にしてくれなかったの。
こうしてエッセイや、たまにエッチな小説を書いているうちに、自分には、少しでも文才があるんじゃないかと期待する。
でも、こころのライバルは一ヶ月に三十冊読む強者だ。彼女がもし、本気で小説を書いたら、わたしなんて足元にも及ばない。悲しい。
彼女の人生をなぞりたい。自分の人生が不満だから、ライバルの人生マナーを辿りたい。
彼女は今どうしているだろう。子供はもういるんだろうな。なんにんだろう。わたしは。またお風呂をサボりながら、
「いまのわたしの人生と違う……」と項垂れる。
職業訓練コースの合格通知が届いた。
これから毎日お風呂にはいる自分なんて想像できない。前はお風呂大好きで帰宅したらすぐ入ってた。
一人暮らしの時はもう病気なので雑だった。
やりたいことと違う中、だれもが、
闘っている。
だから文スト好きなんだ。
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