第39話 頭に「ら」のつく映画といえば?

 カラー写真よりも、白黒写真の方が、コントラストが効いて、見栄えがする場合があります。


 とはいえ、美しい景色なんかはフルカラーで見たいですけど。


 1980年代後期、富士フィルムから使い捨てカメラとして、レンズ付きフィルムである「写ルンです」が発売されました。

 1990年代に入るとその進化バージョンが発売され、中でも「写ルンです・Black & White」は、「白黒写真しか撮ることができない」というユニークなものでした。


 私の父親は、人生で初めて行った富士山への旅行で、ウッカリして「白黒写真しか撮れない写ルンです」を買ったことに気付かず、たくさん写真を撮って帰って来て、現像してみたらカラー写真が1枚もなくて、現像した写真屋さんに文句を言いに行った……そんな失敗談の持ち主です。

 そういう種類の「写ルンです」ことがあることを、まったく知らなかったようで。


 そんな流れで、頭に「ら」のつく映画……。


「ラ・ジュテ」を紹介します。


 原題は「La Jetée」。フランス語で「空港の通路」を意味するらしいです。


 1962年のフランス映画。監督・脚本・撮影はクリス・マルケル、出演はエレーヌ・シャトラン、ダヴォス・ハニッヒ、ジャック・ルドゥー、ジャン・ネグローニ、リジア・ブラニツェほか。


 この映画の監督・脚本を務めたクリス・マルケルは写真家でもあります。モノクロ写真を連続して写す手法で描く、30分ほどの短編映画です。


 あらすじはこちら。


 第3次世界大戦後。パリは廃墟となり、戦争を生き延びた数少ない人類は放射線を避け、地下に移り住んでいました。


 地下社会の中で階級が生まれ、人間が「支配者」と「奴隷」に別れて暮らすようになった世界。


 科学者たちは、不足する薬やエネルギー資源を、時間を超えた先の過去や未来の世界に求め、「奴隷」を使った時間旅行能力の開発実験に急務として取り組んでいました。


 多くの奴隷が廃人になるか、死亡するという悲惨な最期を辿る中、「ある男」は実験の中で“時間旅行能力”に目覚めます。

 

 男は、子供の頃に空港の展望デッキで見た、ある美しい女性と、その側にいた男性の急死という強烈なシーンが忘れられず、その謎を解くまで死ねないという生存衝動に取り憑かれていたので、過酷な実験に耐えることができたのです。


 実験が繰り返され、男は過去を旅します。


 過去の世界の中で、子供の頃に空港で見た「記憶の中の女」を見つけました。

 男と女は親しくなり、逢瀬を重ねます。


 過去に戻る実験は成功だと確認できました。

 未来に戻ってきた男は、科学者たちから「未来へ行き、世界を救うエネルギー資源を持ち帰って来い」と命じられました。


 男はそれに応じ、未来の世界に行くことにしたのですが、同じく“時間旅行能力”を持つ「未来人」と遭遇するのです……。 


 エネルギー資源を持ち帰り、自分のいた世界を救うことができるのでしょうか? 

 そして、子供の頃に見た「記憶の中の女」と、謎の男とは……? 


 過去や未来に時間旅行する、独特の雰囲気を持つSF作品です。


 静止画である白黒写真を連続で写し、ナレーションでストーリーを語っていくという、なんとも不思議な映画。


 ですが、本編の中で数秒間だけ「カラー動画」のカットがあります。ものすごく印象に残る綺麗なシーンです。見てのお楽しみ。


 SF設定ではありますが、専用の大規模なセットを作るわけでもなく、時間旅行の際の小道具や、額に何か器具をつけた未来人の描写など、小さな工夫で最大限の効果を上げている印象です。


 一度見ると、忘れられない作品です。

 

 この映画にインスパイアを受けて、テリー・ギリアムは「12モンキーズ」(1995年)を作ったのだとか。

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