第35話 頭に「も」のつく映画といえば?

 役者さんが、映画やドラマでスポーツ選手を演じる時は、一応はそれなりの練習を積んで、それっぽく見えるように特訓するらしいですが。


 これから紹介する作品で、主演のダン・フォグラーは「卓球の名人」という人物を演じるにあたって、卓球を猛練習したそうですが、実際の撮影はピンポン球をCG合成で処理するので「素振りだけで良かったのか」と知ってガックリきたらしいです。


 そんな流れで、頭に「も」のつく映画、「燃えよ! ピンポン」を紹介します。


 原題は「Balls of Fury」。


 2007年のアメリカ映画。監督・脚本はロバート・ベン・ガラント、出演はダン・フォグラー、ブレット・デルブオノ、クリストファー・ウォーケン、ジョージ・ロペス、マギー・Q、ジェームズ・ウォン、トーマス・レノン、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、ジェイソン・スコット・リーほか。


 ランディは、幼少期は「天才卓球少年」として持てはやされ、注目を浴びていました。


 1988年のソウルオリンピックでは、苦い敗北を喫します。

 インタビューでマイクを向けられたときに、「ディズニーランドへ行きたい」という、試合とまるで関係ないコメントを残し、世間の失笑を買いました。


 そして……小太りの中年となったランディは、バーの片隅で、卓球の曲芸で細々と生計を立てる生活を送っていました。

 過去を知る人たちからは「あれからディズニーランドには行ったのかよ?」とからかわれ、馬鹿にされています。


 そんなある日、ランディは、FBI捜査官のロドリゲスから、潜入捜査を依頼されます。

 中国マフィアのボス、フェンは大の卓球好きで、裏社会で極秘裏に卓球世界大会を開催しているのだそうです。

 フェンの悪事の証拠を掴むため、接近する理由として大会に潜入させよう、というのがFBIの計画でした。


 卓球の腕前を見込んでのロドリゲスの依頼でしたが、長年、ピンポン球を使った曲芸しかやっていなかったランディは、選手として卓球の腕前はすっかり落ちていました。 


 ロドリゲスからは、卓球マスターの老人を紹介され、弟子入りするように言われます。猛特訓して大会で勝ち進んでもらわないと、フェンに接近するチャンスが失われるのですから。

 

 卓球マスターのワン老人は盲目でトンチンカンなことばかり言ってますが、卓球の腕は確かなようです。

 しかも、話を聞くと、フェンは、かつてワン老人の弟子だったようです。師弟対決の代理戦争をする羽目になっちゃいました。

 気合の入ったワン老人の無茶苦茶な特訓に音を上げ、ランディは逃げ出そうとします。

 ですが、ワン老人の孫娘・マギーはセクシーな美人。

 つい、男の見栄で、卓球への意気込みを語り、後には引けなくなりました。


 努力が実り、フェンの大会への出場権を獲得したランディは、大会の詳細を知って驚きます。

 卓球の敗者は殺害されるという、恐るべきデスマッチ・トーナメントだったのです! 

 生き延びるために、そして過去の挫折を乗り越えるために、ランディは闘志を燃やし、ピンポン玉に賭けるのです!……といった、コメディ作品です。


 中国マフィアのボス、フェンを演じるのは、数々の映画で悪役を演じてきた重鎮、彫りの深い悪人フェイスなクリストファー・ウォーケン。


 そのクリストファー・ウォーケンは「間違ったイメージのアジアの姫君」っぽい格好の、和服を着たラスボス。インパクトは絶大です。なにしてるんやこの人。


「一度ミスをするたびに電流が流れ、ミスするごとに電圧が強くなって最後には死に至る」という特殊甲冑を着て、ラスボスのフェンと主人公のランディは、卓球でラストバトルをするのですが……「球をワンバウンドさせて相手に返せば、場所は問わない」というルールで、屋外で、眼下にはワニのいる川が流れるボロボロの吊橋の上で、両者が真剣な顔してラケットを振っているのでありました!


 なんでしょうか、このバカバカしさ、このくだらなさ。戦う二人が真剣な表情であればあるほど、爆笑ものです。

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