第34話 頭に「め」のつく映画といえば?

「み」は「Mr.タスク」、「む」は「ムカデ人間」と「アタマのおかしな博士に拉致監禁されて勝手に人体改造されちゃった」系ホラーが続き、「これを書いている雲条翔って人はこんな映画ばっかり見てるの?」と私の人間性が疑われ、変態じゃないかと感じている人もいるかも。変態界隈の中では、けっこーマトモな方だぞ、と本人は思っています。どこだよ変態界隈って。


 この映画エッセイ『五十音順に映画を語る! ~頭に「あ」のつく映画タイトルと言えば?~』も、残り僅か。


 今回の「め」を含め、「も」「や」「ゆ」「よ」「ら」「り」「る」「れ」「ろ」「わ」の11文字でフィニッシュとなりますので、もう少しお付き合いください。


 さて、気分が沈むホラーが続いたので、映画のカラーをガラッと変えて、コメディを。


 頭に「め」のつく映画、「免許がない!」を紹介します。


 1994年の邦画。監督は明石知幸、出演は舘ひろし、墨田ユキ、西岡徳馬、片岡鶴太郎、江守徹、中条静夫、秋野太作ほか。


 大人気の二枚目アクションスター、南条弘。

 ドラマや映画の中では、高級車を格好良く乗り回している彼ですが、実は自動車の運転免許を持っておらず、撮影の時はスタッフのレッカー車に牽引され、運転している芝居をしていました。周囲には、無免許であることを隠しています。


 ある日、共演していた美人女優の前で無免許であることがバレて、馬鹿にされてしまいます。


 プライドを傷つけられた南条は、なんとしても運転免許を取ってやる!と奮起。

 新作映画の公開に間に合わせるために3週間という期限つきで、撮影を中断し、免許を取りに教習所の合宿に行くことになりました。


 合宿免許コースの宿泊施設はボロい下宿、同じ教習生は話題が合いそうもない若者ばかり。そこから教習所への送迎バスで毎日通うことになります。

 身バレを防ぐために、普段からサングラスをかけ、偽名で身分を隠し、周囲と距離をとる南条。

 合宿所でも、教習所でも、ひとりだけ浮いた存在です。

 

 運転技術が身についていないのに教官たちに横柄な態度を取ったりと、スターのワガママな性格も表面化し、教官たちから呆れられます。

 合宿所に帰っても、息子くらい年の離れた若者たちから、ぞんざいに扱われる始末。

 そんな日常のイライラもあり、3週間という期限の中、焦った南条は、スターである「南条弘」の身分を明かしました。


 周囲の態度は一変。(印籠を見せたあとの水戸黄門みたい)

 それからは教習所にファンが押しかけ、教官たちの態度も軟化し、合宿所の若者たちも一目置くようになります。

 撮影スタッフたちの協力もあり、教習以外でも教習所のコースをセットで再現してくれて、そこで運転の練習をこなす南条。

 

 このまま卒業できるかと思いきや、修了検定の日には、南条を疎ましく思っている、とことん馬が合わないカタブツ教官・照屋が担当となりました。


 緊張のため、ミスを連発する南条。果たして、免許は取得できるのか!?


 自動車運転免許取得のために教習所に通った人なら「あーわかるわかる、電車の来ない踏切でも確認しなきゃなんないのメンドイよね」と共感できるような、教習所コメディです。


 映画会社の社長役で中条静夫が出演しており、舘ひろしと一緒に画面の中に揃うと、どうしても「あぶない刑事」シリーズを連想したり。


 墨田ユキが演じるセクシーな女性教官に「バックが上手ね」と言われて「別の意味に聞こえちゃうな」という大人ジョークもあったり。 


 舘ひろしが真剣な顔で「ハンコ押してくれよ!」と叫ぶシーンは、この作品の中でひときわ印象に残るせいか、あちこちでネタにされています。

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